
| 恩田 陸 | (1964.10.25−) |
| おんだ・りく(女性)、本名・熊谷奈苗(くまがい・ななえ)。 1964(昭和39)年、宮城県仙台市出身。早稲田大学教育学部卒。 大学卒業後、生命保険のOLをしながら作家活動を開始した。 ペンネームはTVドラマ『やっぱり猫が好き』の恩田三姉妹に由来している。 1992年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となった『六番目の小夜子』でデビュー。 2005年、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞受賞、第2回本屋大賞を受賞。 2006年、『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。 2007年、『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。 2017年、『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞。 直木賞と本屋大賞のダブル受賞及び同作家2度目の本屋大賞受賞は、史上初であった。 郷愁的な情景を描くのが巧みで、“ノスタルジアの魔術師”と称される。 ホラー、SF、ミステリーなど、様々なタイプの小説で才能を発揮している。 |
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*読んだ著書*
夜のピクニック
(2004年刊/新潮社)
映画化『夜のピクニック』(2006年日本)
〔概要〕
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは、全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。3年生の甲田貴子は、1年に一度の特別なこの日に、自分の中で賭けをした。それは、クラスメイトの西脇融に声を掛けるということ。貴子は、恋心とは違うある理由から融を意識していたが、今まで一度も話をしたことが無かった。しかし、ふたりの不自然な様子をクラスメイトは誤解してしまい…。
学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。第2回本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
〔感想〕
すごく面白かったです。途中のんびりしているところもあるけど、それは24時間・80キロという長丁場を読者側でも少しなりとも仮想体験できる構成ですね。たくさんの登場人物が、それぞれに悩み、葛藤し、泣き笑いしている様子が、青春ど真ん中という感じです。決してハデではないし、むしろ「ただ歩きながら話している」だけなんだけど、ものすごく爽やか。途中で忍が語る「今聞こえているノイズは、今しか聞こえない。後になって聞こうと思っても、その時には聞こえない。そのノイズを今聞いておくということも、とても大切なことなんだ」というセリフにすごく共感できました。
中学生か高校生ぐらいの時に読んでおけば、きっと後悔しない学生生活を送れたんだろうなぁ…と、僕みたいな平凡な学生生活を送った人間は悔やむでしょうね(笑)越谷オサムもそうだけど、こういう青春小説って、一番必要としている時に読まずに通り過ぎてしまうものなんだよね。
評価/★★★★★
ブラザー・サン シスター・ムーン
(2009年刊/河出書房新社)
〔概要〕
ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを――。
本と映画と音楽……それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。
〔感想〕
楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一。高校時代に出会った男女3人が、大学でそれぞれの道を見つけ、夢に気付き、それに向かって進んでいく。
そしてその時代を振り返ったとき、なにげない日常の中に、かけがえのない瞬間があったことに気付く…。
端的で言うと、そういうお話です。最初の綾音の章は多分に筆者自身の思い出を投影しているようなフシがありますね。
一人称で語られるモノローグ的な文章は湊かなえでちょっと食傷気味かも(笑)
あまり波風もなく、淡々としたまま物語が終わってしまって、ちょっと拍子抜けしました。
評価/★★☆☆☆
Story Seller annex
(2014年刊/新潮社)
〔概要〕
大好評アンソロジー「Story Seller」の姉妹編。
6人の超人気作家が豪華競演。オール読みきりで、読み応え抜群の作品を詰め込んだ。
あっと驚かされるミステリ、くすりと笑える話から、思わず涙がこぼれる恋愛小説まで。
物語の力にどっぷり惹き込まれる幸せな読書体験。
5.恩田陸/ジョン・ファウルズを探して
イギリスの人気作家、ジョン・ファウルズについての考証学。
〔感想〕
僕は彼の本を読んだことがないけど、『コレクター』とか『マゴット』なんかを読んでみたくなりました。
評価/★★★☆☆
蜜蜂と遠雷
(2016年刊/幻冬舎)
映画『蜜蜂と遠雷』(2019年日本)
〔概要〕
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。
「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」というジンクスがあり
近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。
かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。
音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンで妻子もおりコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。
完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ・アナトール19歳。
彼らをはじめとした数多の天才たちが繰り広げるコンペティションという名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?
〔感想〕
めちゃくちゃ面白かったです。詳しくはないけど、僕もクラシックは好きなので演奏シーンとか、コンクールの様子がすごく興味深かったです。『のだめカンタービレ』や『響け!ユーフォニアム』なんかもそうだけど、近年、クラシックや吹奏楽への導入となる良いメディアがあっていいですね。こういうのをキッカケにして、クラシックに興味が出てくるといいですよね。文字や絵にしづらい「音楽」というジャンルが小説になっているので、当然それらの曲が聞きたくなる。僕も小説を読みながら、関連CDの試聴やYou
Tubeで曲をBGMにして読んでいました。やっぱりクラシックも好きだわー。
物語としては、4人の主人公を中心とした群像劇なので、人それぞれ誰かに感情移入して読むんだろうけど、背景が不透明な塵より、明石や亜夜に思い入れを持つ人が多いんじゃないかな?僕は明石にドップリでした。他の、若々しい学生らのコンテスタントと比べて、妻子や仕事、日々の暮らし、背負っているものが全然違ってて。本人は精一杯の努力をしてコンクールに挑んだつもりでも、周りには天才たちがゴロゴロいて。彼がある曲を演奏して、思い通りの演奏ができた時のシーンが、一番グッときました。
当然ながらコンクールの演奏シーンが多くて、音楽や演奏を描写する際に、作者が選んだ手法は、曲から着想されるイマジネーションを風景として広げていくアプローチ。ある曲では森の中に、ある曲ではヨーロッパの街並みに、ある曲では宇宙まで、彼らの想像の翼は羽ばたいていく。そういうやり方は、僕がよく書くライブレポートにもちょっと通ずるところがあって、すごく共感できました。
(以下、ネタバレあり)
評価/★★★★★
クリスマス・ストーリーズ
(2016年刊/新潮社)
〔概要〕
もう枕元にサンタは来ないけど、この物語がクリスマスをもっと特別な一日にしてくれる―。
六人の人気作家が腕を競って描いた六つの奇跡。
自分がこの世に誕生した日を意識し続けるOL、イブに何の期待も抱いていない司法浪人生、
そして、華やいだ東京の街にタイムスリップしてしまった武士…。
ささやかな贈り物に、自分へのご褒美に。冬の夜に煌めくクリスマス・アンソロジー。
〔感想〕
4.恩田陸/柊と太陽
「クリスマス」がなくなった近未来の時代のお話なのかな?サンタ=三田という謎の人物についての
考証みたいな物語だったけど、なんか世界観に入り込めずに白けてるうちに終わっちゃった感じ。
評価/★★☆☆☆
祝祭と予感
(2019年刊/幻冬舎)
〔概要〕
入賞者ツアーのはざま、亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノの恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。
芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。
作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけになった忘れ得ぬ教え子の追憶「袈裟と鞦韆」。
ジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のマサルの意外な一面「竪琴と葦笛」。
楽器選びに悩むヴィオラ奏者・奏へ天啓を伝える「鈴蘭と階段」。
巨匠ホフマンが幼い塵と初めて出会った永遠のような瞬間「伝説と予感」。
大ベストセラー『蜜蜂と遠雷』、待望のスピンオフ短編小説集。大好きな仲間たちの、知らなかった秘密。全6編。
〔感想〕
『蜜蜂と遠雷』の実写映画版を観て、「なんか違うなぁ」と思った後、スピンオフ小説があることを知りました。
そして、「そうそう、こういう感じだよね」と安心できる内容でした。
小説から映画になるときに、いろいろアレンジするのは仕方のないことだけど、それがあまり好ましくないものだと、とても残念。
特に、原作がものすごく面白かっただけにね。全6話、それぞれ軽い短編だけど、「竪琴と葦笛」が特に良かったなぁ。
何でもできる天才・マサルの早熟ゆえの葛藤とか、策士っぷりを楽しめました。
更なる続編を期待したいけど、話が完成しているので、これで終わりかな。
評価/★★★☆☆
灰の劇場
(2021年刊/河出書房新社)
〔概要〕
大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。
いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。
きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。
様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。
そしてその記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。
ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。
「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、一九九四年九月二十五日(朝刊)の新聞記事のコピー。
ずっと記憶の中にだけあった記事……記号の二人。
次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。
〔感想〕
新聞の三面記事をきっかけに、自殺した女性二人の真相に迫る物語。
作家自身の苦悩もあわせて描く意欲作でした。
0…作家自身を描く
1…作家のイメージによる、心中した女性二人の物語
(1)…その物語の舞台化の過程を描く
こんな感じの三本の柱が並行して進んで行きます。
最初は、小さな記事を読んで、なんとなく残っていただけの記憶だったけど
次第に「こういう考え方もできるかも」という視点で「1」の内容が変わって行って。
結論から言うと、女性二人の詳細はわからないままなんだけど、いろんな空想が広がっていくのは
とても物語的だと思うし、ストーリーテラーの恩田さんの見せ場って感じで面白かったです。
最後に気になったのは「固めるテンプル」はその当時にはもうあったのか?ということでした。
評価/★★★☆☆
木洩れ日に泳ぐ魚
(2007年刊/中央公論新社)
〔概要〕
舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿―。
共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。
濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。
〔感想〕
すごく面白かったです。序盤から既に二人の男女が破局していく様子を匂わせているんだけど
まずは「この二人の関係性は?」というところが気になります。部屋にはいない「あの男」は誰なのか。
そこらへんは予想出来たんだけど、「じゃあこの二人の行きつく先は?」ということが気になって。
後半は二人の素の感情がどんどんさらけ出されていくのが圧巻でした。
評価/★★★★☆