
| 越谷 オサム | (1971.11.28−) |
| こしがや・おさむ 1971(昭和46)年、東京都生まれ。学習院大学中退。越谷市在住。 2004年、デビュー作『ボーナス・トラック』で、第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。 |
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*読んだ著書*/著作リスト
ボーナス・トラック
(2004年刊/新潮社)
〔概要〕
草野はハンバーガーショップで働くサラリーマン。
ある日彼は、深夜に車で帰宅する途中、轢き逃げを目撃。
それ以後、草野には幽霊となった事件の被害者・亮太が見えるようになり、
奇妙な友情関係を築きながら轢き逃げ犯を探し始めるのだが…。
〔感想〕
すごく面白かった。全く怖さを感じさせない幽霊の亮太と接していることで、
次第に忙しい日常から自分を省みることになっていく草野の関係がいい。
爽快で明るい会話なのに、時々ポツリと感じさせる寂しさや切なさ。そのあたりのバランス感が絶妙でした。
年齢が近いからか、選んでいる単語にもすごく親近感を覚えるし。
二人がプロレスゲームで遊んでいるあたりの雰囲気もよかった。
最後はちょっと胸の熱くなる展開で…最後まで気持ちよく読める作品でした。
今後の作品も楽しみ。
評価/★★★★☆
階段途中のビッグ・ノイズ
(2006年刊/幻冬社)
〔概要〕
暑い夏、無意味に熱かった僕たち、ビールなんて苦くて飲めなかったあの頃―。
だめな先輩のせいで、伝統ある軽音楽部が廃部になってしまう。
そんながけっぷちに立たされても、啓人は煮え切らなかった。しかし、幽霊部員だった伸太郎に引きずられ…。
太ももが眩しい同級生への恋、頼りにならない顧問、不協和音ばかりの仲間たち。
四面楚歌の状況で、啓人は「一発ドカンと」やれるのか!?振り返れば、すべてが懐かしく、愛しい。
〔感想〕
サイコーに面白くて、一気に読んでしまいました。
一言で言えば、「ただ楽しく音楽がやりたくてバンドを組む高校生の青春物語」なんですが
瑞々しいその文体からは、誰もが経験したことのある学生時代の息吹みたいなものを感じさせてくれます。
作中で、主人公の啓人が歌う歌詞は、キッチリした英語じゃなくても、あえてひらがな羅列の日本語です。
「どぅーゆはう゛だたい・とぅーりっすんとぅみーぅわいん」みたいな。
これ、わざとだと思うんですよね。子どもの頃、夢中になって聴いてた英語の歌詞って
言葉じゃなく音で聞き取ってるものだし、それによって文章に逆に老獪じゃなぃ若さが溢れてる。
忘れかけた「青春」という名の欠片たちを、ひとつひとつ思い出していく。そんなエネルギーがあります。
大人になるにつれて、年齢の階段に少しずつ置いていってしまう、大切なそれらの欠片たち…
「忘れてしまっても、また思い出せばいい」。そう思える強さって、なんかいいですね。
もし僕がこの本を中学生か高校生ぐらいの時に読んでいたら「バンドやりたい!」と思っていたでしょうね。
作中に出てくる曲たちを、聞きたくなりました。
評価/★★★★☆
空色メモリ
(2009年刊/東京創元社)
〔概要〕
たったひとりで県立坂越高校文芸部を守る、ハカセこと河本博士に春が来た。なんと、可愛い新入生が入部してきたのだ。
彼女の名前は、野村愛美さん。ブンガク少女らしからぬ彼女が、なぜ人気のない弱小文化部に入部を決めたのだろう?
不思議な雰囲気の彼女には、何か秘密がありそうだが。
そんなあれこれを、部員でもないのに文芸部に入り浸っている湧井陸は、おもしろおかしく空色のUSBメモリに綴り始めた。
その空色メモリが思わぬ騒動を巻き起こして―。
気鋭の著者が満を持して贈る、学園青春小説の決定版。
〔感想〕
なかなか面白かったです。毎回ほのぼのとした青春小説で面白いんだけど、今回の作品はちょっとコドモ向きかも。
下駄箱の靴を隠すとか、学校内での複雑な人間関係(子どもならではの悩み)とか、遠い昔の出来事ばかりで(笑)
中学生の頃に読めば、「文科系のクラブも悪くないな」と思えるのかも。
最後はちょっとうまくまとまりすぎる気もしたけど、余韻の残る唐突なラストはけっこう好きです。
評価/★★★☆☆
陽だまりの彼女
(2008年刊/新潮社)
〔概要〕
恋の始まりに、理由なんてない。でも、恋の終わりには、必ず理由がある―。
運命の人を、そんなに簡単にあきらめちゃって、いいんですか?
中学時代の幼馴染と10年ぶりに再会した俺。冴えないイジメられっ子だった彼女は、驚異の大変身を遂げていた。
モテ服にさらさら大人ヘア、しかも、デキる女系。でも彼女、俺には計り知れないとんでもない過去を抱えていて…。
哀しくて可笑しくてふわふわ心温まる、恋する切なさのすべてがつまったファンタジック・ラブストーリー。
〔感想〕
面白かったです。個人的には、かなりツボでした。
「恋の始まりに、理由なんてない。でも、恋の終わりには、必ず理由がある」というコピーも、なかなかいい。
もうひとつ付け加えるとするなら、「愛の終わりは、ある日突然やってくる」かな。
浩介と真緒の出会い、別れ、再会、結婚は、すごくありがちな恋愛小説。
かなりベタだけど、ヒロインの真緒は男視点から見る理想をそのまま姿にしたような女性。
そして中盤以降、物語が動き出して…。
終盤の浩介の慟哭は、かなりグッとくるものでした。
失ったものの大きさって、他の誰にもわからないものなんですよね。
その存在が大きければ大きいほど、悲しみの大きさもはかりしれなくて。
万人にはオススメできないけど、失恋の痛みを感じたことのある男性諸兄には響くものがあると思います。
評価/★★★★☆
金曜のバカ
(2010年刊/角川書店)
〔概要〕
天然女子高生と気弱なストーカーが繰り返す、週に一度の奇天烈な逢瀬の行き着く先は…。
ピュア過ぎてアブノーマルなヤツらが繰り広げる妄想と葛藤。ちょっと変でかわいい短編小説集。
〔感想〕
とても楽しい小品を集めた佳作集です。
4番目の「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」が一番好きです。
恐竜オタクであることをひた隠して、好きな女の子に嫌われまいとする男の子のお話。
いろんなジャンルでマニア的なところを持っている僕にとっては、なんとも身に覚えのあるようなないような…(笑)
オチも痛快で楽しかったし、こんな爽やかな恋愛をしてみたいと思わせてくれる物語です。
他の作品も、オタクとかマニア、妄想爆発の高校生とか、なにかひとクセのある人物たちが繰り広げる青春ストーリーのオンパレード。
こういう系統の作品を書かせたら、やっぱりこの著者はうまいなぁ。
評価/★★★★☆
せきれい荘のタマル
(2011年刊/小学館)
〔概要〕
静岡から東京の大学に進学した石黒寿史は、同郷である法村珠美(のりたま)への恋心から、同じ映画研究部に入部する。
しかし寿史は、やたら面倒見のいい、同サークルの先輩・田丸大介(タマル)につきまとわれ、
早朝マラソンに付き合わされそうになったり、
あきらかに怪しいサークルのBBQに参加させられたりと、振り回されっぱなしの日々。
あげく、タマルまでがのりたまに恋心を抱き、猛攻撃を始めて―。
いい奴だけど、どうもおせっかいが過ぎる男子大学生・タマルと、タマルに毎度振り回される後輩・寿史が繰り広げる、
なかなか熱くるしい、ドタバタ学園コメディー。
〔感想〕
この作家の本は久しぶりに読んだけど、「ああ、こんな感じ」と安心できる青春テイスト。今作はボチボチってとこかな。
新潟とか静岡の出身とか、映画部とか、伏線っぽいけど特に深い意味はなかったり、
中盤から急にカルトの話に展開したりと、意外なドタバタっぷり。
ラストの展開はさらにちょっと意外だったけど、教訓としては「片想いの恋は、押しまくれ!」ってことなのかな(笑)
評価/★★★☆☆
くるくるコンパス
(2012年刊/ポプラ社)
〔概要〕
さえない中学将棋部の男子三人。メガネのカズト、下膨れのシンヤ、おこちゃまのユーイチ。
彼ら三人は、転校してしまった部活仲間の佳織に会うために、京都行きの修学旅行を飛び出して大阪へ。
恐ろしい体育教師や、非協力的な班の女子、不慣れな大阪の街…数々の困難を乗り越えて、たどりついた先には…?
苦くて痛いような、甘酸っぱくてくすぐったいような、熱くて特別な、長い旅が始まる。
〔感想〕
常連ではないけど、時々ふと思い出して行きたくなるようなお店。この作家の物語は、僕にとってそんな味わいです。
主人公たちが常にティーンエイジャーで若いので、自分自身の年齢からするとだいぶ過去の事(笑)
だけどそんな、忘れかけていた甘酸っぱい観賞を思い出させてくれるような。
こういう小説は、中学生の頃にリアルタイムで読みたかったなぁ。常にそう思わせてくれる作家さんでもあります。
この物語の主人公たち「冴えない将棋部三人組」は、どこにでもいるような本当に冴えない中学生。
だけどちょっぴりの勇気と、わずかだけど大きな一歩を踏み出したことで、大冒険に出かけます。
なかなか誰もが体験したことはないけど、体験したいと思っていたような、そんな一日。
それがまるで自分のことのように、すごく身近に感じられるから、物語が瑞々しく感じるんだろうね。
序盤はちょっと読んでいて恥ずかしくなるような駆け出しだけど、大阪に着いてからの怒涛の攻勢は
ページを繰る手が止まらなくなって、最後まで一気に読んでしまったほどでした。
中学生の時の回想だけで終わったら、ありがちなライトノベルだけど
最後の現代編のエピローグがなんとも切ないです。
評価/★★★☆☆
房総グランオテル
(2018年刊/祥伝社)
〔概要〕
東京から特急列車でわずか1時間20分、青い海と月色の砂浜が美しい南房総・月ヶ浦。
この町で生まれ育った私、藤平夏海は17歳の高校二年生、民宿「房総グランオテル」の看板娘だ。
相棒は、すさまじい美少女なのに中身がアホすぎる従姉妹のハルカ。
私たちの楽しみは、オフシーズンにしかできない客室でのお泊まり会だった。
明日は休校、空室ありの絶好のチャンス!のはずだったのに、今日のお客さんたちはどこか様子がおかしくて…。
海辺の民宿を舞台にとびっきりの奇跡が起きる最高にキュートな物語。
〔感想〕
すごく面白かったです。この作家ならではのライトなテイストが健在で、すごく読みやすいし、読了感もいい。
登場人物たちもそれぞれ魅力的で、キャラが立っていてよかったです。
経営者夫婦と、一人娘で看板娘の夏海。章によって主観の変わる宿泊客の3人との絡みも面白かった。
特に、味のある謎の赤パン中年、菅沼が良かったなぁ。やっぱりこの作家さんの作風が好きです。
評価/★★★★☆
まれびとパレード
(2018年刊/KADOKAWA)
〔概要〕
元恋人に再会した私。でも、彼はゾンビになっていて――。
引きこもりの弟が恋したのは、座敷わらしだった!?
怪しい男の声がする。通報を受けて倉庫跡地に行った市職員が出会ったのは――。
興福寺東金堂の四隅を護る四天王立像。彼らに踏まれ続けている邪鬼たちの冒険譚。
人生を変えてくれたのは、人間ではない何かでした――。
ゾンビ、座敷わらし、泥田坊、邪鬼――。彼らに出会ったら、何だか少し、変わるかも!?
〔感想〕
愉快な妖怪たちとの交流を描く短篇集。
どれもポップなテイストで描かれていて、それはこの作家さんならではの筆致。
どれもがクスリと笑えるコメディタッチ。反面、妖怪モノなのに緊迫感はゼロなんだよね(笑)
「弟のデート」が一番好きかな。
評価/★★★☆☆
| 1 | ボーナス・トラック | 2004/12 | 新潮社 | ★★★★☆ |
| 2 | 階段途中のビッグ・ノイズ | 2006/10 | 幻冬舎 | ★★★★☆ |
| 3 | 陽だまりの彼女 | 2008/4 | 新潮社 | ★★★★☆ |
| 4 | 空色メモリ | 2009/11 | 東京創元社 | ★★★☆☆ |
| 5 | 金曜のバカ | 2010/1 | 角川書店 | ★★★★☆ |
| 6 | せきれい荘のタマル | 2011/1 | 小学館 | ★★★☆☆ |
| 7 | いとみち | 2011/8 | 新潮社 | − |
| 8 | くるくるコンパス | 2012/4 | ポプラ社 | ★★★☆☆ |
| 9 | いとみち 二の糸 | 2012/9 | 新潮社 | − |
| 10 | いとみち 三の糸 | 2014/4 | 新潮社 | − |
| 11 | 魔法使いと副店長 | 2016/11 | 徳間書店 | − |
| 12 | 房総グランオテル | 2018/3 | 祥伝社 | ★★★★☆ |
| 13 | まれびとパレード | 2018/10 | KADOKAWA | ★★★☆☆ |
| 14 | 四角い光の連なりが | 2019/11 | 新潮社 | − |
| 15 | たんぽぽ球場の決戦 | 2022/06 | 幻冬舎 | − |