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雲のむこう、約束の場所
The place promised in our early days
2004年日本/ファンタジードラマ

<監督・原作・脚本>
新海誠
<声優>
藤沢浩紀/吉岡秀隆
白川拓也/萩原聖人
沢渡佐由理/南里侑香
岡部/石塚運昇
富澤常夫/井上和彦
笠原真希/水野理紗
水野理佳/中川里江
<ストーリー&コメント>
戦後の1996年、津軽海峡を境に南北に分断されたもうひとつの日本。世界の半分を覆う共産国家群“ユニオン”が占領する北海道に、雲にまで達する目的不明の奇妙な塔が建設され、本州以南を統治するアメリカとの間に軍事的緊張をもたらしていた。そんな中、青森で暮らす中学生、ヒロキとタクヤは、塔の近くまで飛ぼうと自力で飛行機を作り始め、二人はひそかに憧れていた同級生のサユリに「飛行機で塔まで連れていく」と約束する。しかし、中学3年生の夏、突然サユリは二人の前から姿を消してしまう…。
2002年の『ほしのこえ』以来2年ぶりとなる新海誠監督初の長編劇場作品。南北に分断された架空の戦後の日本を舞台に、謎の病に冒されたヒロインを救うため奮闘する二人の少年の姿を描く。
常磐のファンタジーから、「3年後」で急に世界観が一変するあたりでちょっと引き離されそうになったけど、なんとかついていけました。仮想世界を舞台にしているので、その世界での「常識」を観ている側も「そういうものなんだ」と解釈していかなければいけないと思うんだけど、ちょっと物語が飛躍しすぎかもしれないね。平行宇宙とか、謎の病とか、世界の権力のパワーバランスとか。そのあたりを必死に考えていたところで、話が「ヴェラシーラ」に戻っていったので、最後はある程度納得できたかな。それでも、塔がなんのために作られているのか、サユリの能力はなんだったのか、とかの謎は残るけどね。
話は全然違うけど、西谷史さんの小説『女神転生』で、主人公の中島が愛する弓子を救う時に「地球のすべての生命より君を選ぶ」というようなことを言うんだけど、終盤のヒロキとタクヤの行動はまさにそれを彷彿とさせるものでした。
91分/★★★☆☆
(2018年8月15日)
主題歌:「きみのこえ」川嶋あい

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秒速5センチメートル
a chain of short stories about their distance
2007年日本/ファンタジードラマ

<監督・原作・脚本>
新海誠
<声優>
遠野貴樹/水橋研二
少女時代の明里/近藤好美
篠原明里/尾上綾華
澄田花苗/花村怜美
水野理紗/水野理紗
<ストーリー&コメント>
第一話「桜花抄」東京の小学校に通うタカキとアカリだが、アカリの引っ越しにより離れ離れに。中学校に進学したタカキは、大雪の日、電車を乗り継ぎ、栃木県に住むアカリに会いに行くのだが…。
第二話「コスモナウト」種子島の女子高校生カナエは、密かに恋するタカキに想いを伝えられずにいた。卒業を間近に控え、進路に悩む彼女は、ひとつの決断をするのだが…。
第三話「秒速5センチメートル」東京で社会人になったタカキは仕事に追われる毎日。ある日、彼は忘れかけていた以前の自分をふと思い出す…。
『雲のむこう、約束の場所』以来3年ぶりとなる新海誠監督の第3作目の劇場公開作品。タイトルは、「桜の花びらが舞い落ちる速度」。互いに惹かれながらも小学校卒業後、離れ離れになった少年と少女が大人になるまでの時間と距離による変化を短編3話の連作構成で描く。
なかなか面白かったです。最初の雰囲気から通してずっと、主人公のタカキは陰鬱な表情・声で。ハッキリとした性格の人には受け入れがたいかもしれないけど、こういう、青春時代特有のどうしようもないやるせなさみたいなものは、誰もが通ってきている道のはず。ほのかな恋心は、実っても、実らなくても、それだけで物語になりえる。世界中の日常に散らばっている、誰にでもある場面だから、共感できるものはきっとあると思うんだよね。
ちなみに「コスモナウト」というのは、ソビエトやロシアでの宇宙飛行士のことなんだそうです。
63分/★★★★
(2018年8月15日)
主題歌:「One more time, One more chance」山崎まさよし

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星を追う子ども
Children who Chase Lost Voices from Deep Below
2011年日本/ファンタジードラマ

<監督・原作・脚本>
新海誠
<声優>
アスナ/金元寿子
シュン&シン/入野自由
モリサキ/井上和彦
リサ/島本須美
マナ/日高里菜
ミミ/竹内順子
アスナの母/折笠富美子
<ストーリー&コメント>
幼いころに父親を亡くし、母親と2人暮らしの少女アスナは、父の形見の鉱石ラジオから流れてきた不思議な唄が忘れられずにいた。そんなある日彼女は、地下世界“アガルタ”から来たという少年シュンと出会う。次第に心を通わせていく2人だったが、少年は突然姿を消してしまう。シュンの行方を追い求めるアスナは、新任教師のモリサキから地下世界にまつわる不思議な神話を聞かされる。その世界こそシュンが来たという“アガルタ”だった。そして、そんなアスナの前に、シュンと瓜二つの異国の少年シンが現われるが…。
これまでの新海作品とテイストが大きく異なった本格冒険ファンタジー。幼い頃に読んだ児童書、『ピラミッド帽子よ、さようなら』をモチーフに、少年少女の冒険を多彩なアクションシーンとともに描く。
新海監督自身のコメントでは、「今回の作品はジブリ作品を連想させる部分が確かにあると思うのですが、それはある程度自覚的にやっているという部分もあります。また今作では「日本のアニメの伝統的な作り方で完成させてみる」ことを個人的な目標にしていた」そうです。
なかなか面白かったです。不思議な茜色の空(僕は「新海スカイ」と呼んでいる)や星空を多用した世界観はどの作品を通じても共通しているところですが、今作の舞台は現代ではなく、ファンタジー世界。イザナギ・イザナミの神話など「よみがえりの伝承」は僕も好きな話なので描かれ方が興味深かったし、物語が全体的にしっかりと構成されていて、一本調子ながらも力強い舵をもって進んで行っていると思いました。ジブリ作品をオマージュしている場面がいくつかあって、長くアニメを好きな人間には楽しめる要素も多かったです。新海監督の作品、僕はやっぱり好きだなぁ。
116分/★★★★
(2018年9月8日)
主題歌:「Hello Goodbye & Hello」熊木杏里

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言の葉の庭
The Garden of Words
2013年日本/ラブストーリー

<監督・原作・脚本>
新海誠
<声優>
秋月孝雄/入野自由
雪野百香里/花澤香菜
タカオの母/平野文
タカオの兄/前田剛
タカオの兄の彼女/寺崎裕香
松本/井上優
佐藤/潘めぐみ
相沢/小松未可子
<ストーリー&コメント>
靴職人を目指す高校1年生のタカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。そんなある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた…。
万葉集の一編から始まる“孤悲(こい)”の物語。靴職人を目指す男子高校生と、年上の女性との淡い恋や心の揺らぎを、雨に重ねて描く。高精細な絵作りにこだわり、光の表現、さまざまな雨の描写や匂い立つようなみずみずしい草木が極めて美しい、新海誠監督の真骨頂ともいえる名作。
すごく面白かったです。尺が短いけど、その分余計なものがそぎ落とされてストーリーがうまくまとまっています。雨を描く風景描写が写真みたいで洗練されていてとにかく美しく、ドラマチックな気配みたいなものをさらに増幅しています。
こういう「ミステリアスな女性とのラブストーリー」は、だいたいいつも男の方がまっすぐで、女の方が何か影を持っていることが多い気がするなぁ。僕の好きな傑作韓国映画『春の日は過ぎゆく』もそうだけど、やるせない想い、憧憬みたいなものって、世界共通のテーマなのかもね。
作中に登場する印象的な和歌は、『万葉集』に収められた柿本人麻呂の歌なんですね。
「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らんか 君を留めん」
 −雷が鳴って雲が広がり、雨が降ってくれたら、君をここに留められるのに
「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我は留らむ 妹(いも)し留めば」
 −雷が鳴って雨が降らなくても、私はここに留まります あなたが引き留めるなら

飛鳥時代の歌人も、切ない恋をしていたのかな。
46分/★★★★
(2018年8月23日)
主題歌:「Rain」秦基博

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君の名は。
your name.
2016年日本/ファンタジードラマ

<監督・脚本>
新海誠
<声優>
立花瀧/ 神木隆之介
宮水三葉/上白石萌音
奥寺ミキ/長澤まさみ
宮水一葉/市原悦子
勅使河原克彦/成田凌
名取早耶香/悠木碧
藤井司/島崎信長
高木真太/石川界人
宮水四葉/谷花音
<ストーリー&コメント>
千年ぶりとなる彗星の接近を1ヵ月後に控えた日本。山深い田舎町で鬱屈した毎日を過ごし、都会の生活に憧れを抱く女子高生の三葉は、ある日、夢の中で自分が東京の男子高校生になっていることに気づき、念願の都会生活を満喫する。一方、東京の男子高校生・瀧は、山奥の田舎町で女子高生になっている夢を見る。そんな奇妙な夢を繰り返し見るようになった2人は、やがて自分たちが入れ替わっていることに気がつく。戸惑いつつも、メモを残してやりとりしながら、少しずつ事実を受け止めていく瀧と三葉。ところが、互いに打ち解けてきた矢先、2人の入れ替わりは突然起こらなくなってしまう。そこで瀧は、夢の記憶を頼りに三葉に会いに行こうと決心するのだったが…。
印象的な主題歌と、繰り返し流れるCMで社会現象ともいえる大ヒットを記録した作品です。遅ればせながら民放のテレビ放送で観たんですが、なかなか面白かったです。男女の入れ替わりは大林監督の『転校生』、やりとりの様子は韓国映画の『イルマーレ』『リメンバー・ミー』、ハリウッド映画の『オーロラの彼方へ』なんかと同じ着想で、新しくもどこか懐かしい雰囲気がヒットの理由なのかもね。
ほのぼのとしたラブストーリーなのかと思いきや、中盤からはすごく壮大な話になってきて、『サマーウォーズ』みたいな展開に。飛騨の山並みや組紐の美しさ、印象的なドアの閉まる描写とか、映像も綺麗で、演出もいい。みんなが面白いと納得できる作品でした。
新海監督の作品はこれが初めてなので、他の作品も観てみようかな。
107分/★★★★
(2018年1月13日)
主題歌:「前前前世」、「スパークル」RADWIMPS

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天気の子
Weathering With You
2019年日本/ファンタジードラマ

<監督・脚本>
新海誠
<声優>
森嶋帆高/醍醐虎汰朗
天野陽菜/森七菜
須賀圭介/小栗旬
須賀夏美/本田翼
天野凪/吉柳咲良
安井刑事/平泉成
高井刑事/梶裕貴
立花冨美/倍賞千恵子
立花瀧/神木隆之介
宮水三葉/上白石萌音
カナ/花澤香菜
アヤネ/佐倉綾音
<ストーリー&コメント>
記録的な天候不順で雨が降り続く夏の東京。離島の実家を家出した高校生の森嶋帆高は、なかなかバイト先を見つけられず、東京の厳しさに打ちのめされかけていた。そんなとき、小さな編集プロダクションを経営する須賀圭介に拾われ、住み込みで働くことに。さっそく事務所で働く女子大生の夏美とともに、怪しげなオカルト雑誌のための取材を任された帆高。やがて彼は、小学生の弟と二人暮らしをしている少女・天野陽菜と出会う。彼女にはある不思議な能力があった。なんと彼女は、祈るだけで雨空を青空に変えることができるのだったが…。
『君の名は。』が大ヒットした新海誠監督の次回作ということで大注目の作品。結末の展開に賛否両論があるみたいだけど、個人的にはすごく好きだし、面白かったです。
(以下、ネタバレ文。観た後で、マウスでなぞってお読みください)
あの最後って、西谷史さんの『女神転生』のまんまだよね。第2巻「魔都の戦士」のラストで、宇宙空間で十字架に磔にされた弓子(イザナミ)の体は魔界と現世を閉ざす役目を果たしていたけど、それにも構わず弓子を救った中島(イザナギ)が「五十億の人間より、ぼくは君一人を選ぶ!」と叫ぶんだよね。小学生か中学生の頃に読んだ小説だけど、いまだにそのシーンがすごく心に残っています。世界のすべてを敵に回しても、愛する人を救う。これが「究極の愛の形」なんじゃないかな、と。今作の帆高がそのシーンとダブって見えました。そのあたり、かなりグッときたなぁ。僕が帆高の立場だったら、きっと同じことをするだろうなぁ。
全編を通して、青空や、主人公たちが駆ける「動」の動きと、静かな雨粒、重い曇り空の「静」の対比がすごくメリハリを感じられました。起承転結の疾走感もすごくいいし、間違いなく面白い作品だったと思います。なお、本作で登場する廃ビルは「代々木会館」という実際に存在した建物で、2019年の夏に解体されてしまったんだそうです。
『君の名は。』の登場人物がかなりガッツリと出てくるけど、そのあたりはスピンオフ的な遊び要素としてはアリなんじゃないかな。
114分/★★★★
(2019年7月22日)
(再観:2020年11月22日)
主題歌:「愛にできることはまだあるかい」RADWIMPS

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すずめの戸締まり
Suzume
2022年日本/ファンタジードラマ

<監督・原作・脚本>
新海誠
<声優>
岩戸鈴芽/原菜乃華
宗像草太/松村北斗
岩戸環/深津絵里
岡部稔/染谷将太
二ノ宮ルミ/伊藤沙莉
海部千果/花瀬琴音
岩戸椿芽/花澤香菜
芹澤朋也/神木隆之介
宗像羊朗/松本白鸚
ダイジン/山根あん
<ストーリー&コメント>
九州の静かな町で暮らす17歳の少女・すずめは、「扉を探してるんだ」という旅の青年に出会う。彼の後を追うすずめが山中の廃墟で見つけたのは、まるで、そこだけが崩壊から取り残されたようにぽつんとたたずむ古ぼけた扉。なにかに引き寄せられるようにすずめは扉に手を伸ばす。やがて、日本各地で次々に開き始める扉。その向こう側からは災いが訪れてしまうため、開いた扉は閉めなければいけないのだという。迷い込んだその場所には、すべての時間が溶けあったような空があった。不思議な扉に導かれ、すずめの“戸締まりの旅”がはじまる。
『天気の子』以来3年ぶりとなる新海誠監督の新作。好き嫌いは分かれそうな内容だったけど、個人的にはすごく面白かったです。ひと昔前の日本のアニメ映画といえばスタジオジブリ作品が毎回話題になってたけど、その跡を継ぐのは新海監督作品なんじゃないかなぁ。
『君の名は。』では彗星の飛来、『天気の子』では都会を沈める大雨と、新海監督の作品では大きな災害をテーマとしていますが、今回のテーマはそのものズバリ東日本大震災を主とした各地の大地震、大災害。すずめが旅する九州、愛媛、神戸、東京、東北はいずれも大きな地震に襲われた町だし、入場者特典の『新海誠本』にそのあたりが詳しく書かれていたので割愛しますが、2011年の震災から既に11年が経ち、震災を知らない世代が育ち、風化していっていることに向き合う覚悟の真剣さが感じられました。新海誠監督の最高傑作と言ってもいいんじゃないかな。同世代だし、まだまだこれからも応援していきたい監督です。
122分/★★★★
(2022年11月14日)
(2022年12月4日)
主題歌:「すずめ feat. 十明」、「カナタハルカ」RADWIMPS