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〜"MY FIRST LOVE"〜
コンサート中盤。
舞台に幕が降り、メンバーたちは裏でちょっと休憩。
その間、スクリーンには「初恋」をテーマにした短編映画が映されます。
浜田省吾本人は出演していないんですが、コンサートツアーのテーマでもある
「初恋」を描いた淡い物語で、なかなか好感が持てます。
この映像、DVDなどでまた観られる機会があるのかな?
それも今のところわからないので、覚えている限りだけど
この映像の内容を、活字化して残しておこうと思います。
(コンサートグッズのパンフレットのスクリプトも参考に)
*
SCENE 1:健一の部屋
朝、アパートの一室。
引越ししたばかりで、開いていないダンボール箱が積み重なっている。
主人公、田中健一。10歳。
父と離れ、母・幸子、4歳の妹・りさこと3人で新しい生活を始めようとしている。

彼が父と暮らした家から持ってきたものは、スティービー・ワンダーの古いレコードだった。
ヘッドホンを耳にあて、口ずさみながらこっそりと音楽を聴いていると
急に現れた母から、ヘッドホンをとられてしまう。
幸子「こそこそ聞かなくてもいいのよ。別にとりあげたりしないから」
健一「父さんに・・・返さなくてもいいの?」
幸子「子どもはそんなこと、気にしなくていいの!それよりさ・・・食器とか、どこに入れたっけ?」
そういって、段ボール箱を幾つか開けて見る母。
幸子「今日から新しい生活なんだから。朝食も毎日ちゃんと作ることに決めたの!
お母さん、夜の仕事じゃなくなったし。お給料安いけどさ・・・冷凍モンもなし!」
賑やかな様子に、妹が目をこすりながら起きてくる。
幸子「おぅ、おはよーう!」
健一「珍しいことするから、りさこもびっくりしてるじゃないの・・・」
SCENE 2:ダイニングキッチン
朝食を食べている兄妹の横で、スーツを着て、化粧をしている母。
幸子「・・・濃くないかな?大丈夫?」
健一「うん」
幸子「一人で・・・大丈夫よね?お母さんも今日が初日だし」
健一「うん、大丈夫だよ。お母さんこそ、張り切りすぎてテンパんないでよ」
幸子「大丈〜夫よ!じゃ、りさこのお迎えもお願いね」
健一「わかった。じゃあ、行ってきます」
幸子「はい、行ってらっしゃーい!気をつけてねー!」
りさこ「いってらっしゃーい」

SCENE 3:小学校・教室
転校生の登場に、ザワついている教室。
教壇には、若い女性教師。黒板に、「田中健一」と名前を書いている。
女教師「はーい、みんな静かにしてー!」
健一「田中健一です。よろしくお願いします」
緊張気味なのか、笑顔もなく、ぶっきらぼうに挨拶。
女教師「田中くんは東京から来ました。みんな仲良くしてあげてねー」
生徒たち「はーい」
元気のいい男子生徒が1人突然立ち上がり、質問。
男子A「好きなコのタイプはー!?」
教室中が、笑いに。
1人対複数。初めから、新しい環境にとけこむのは難しい。
女教師「じゃあ、田中くんの席は・・・」
言いかけるのと同時に、健一はスタスタと歩き、教室の一番後ろ、窓側の空いている席へ。
女教師、そんな健一の様子にちょっとため息。
健一の席の隣には、スラリとしたスタイルの美少女、鈴木。
健一は彼女を横目でチラリと見て、軽く挨拶。
1時間目、国語の授業が始まる。
女教師「じゃあ、授業を始めます。教科書を開いて。鈴木さん、田中くんに教科書を見せてあげて」
鈴木「はい」
離れていたイスを寄せ合い、1冊の教科書を共有する2人。
そんな2人を、廊下側、反対側の席から横目で見るガキ大将・リュウ。
SCENE 4:小学校・校庭
晴れたグラウンドで、体育の授業。
今日の競技は短距離走。2人1組になっての対決だ。
女教師の笛の音で、並んでいる列の先頭から2人ずつトラックへと勢いよく駆け出していく。
まもなく健一の番。
ペアは、メガネをかけて運動の苦手そうな男子生徒。
「どけ。代われ・・・」と、そこへリュウが割り込んでくる。
ガキ大将らしく、身体もガッシリとした健康優良児だ。
腰を落とし、ダッシュの体勢に入るリュウ。
リュウ「転校生だからって、容赦しねぇかんな」
と言いつつ横を見ると、そこにはメガネの男子生徒が。
ここで必ず、笑いがおきますね(笑)
なんでお前なんだよ、と呆れる表情のリュウ。
男子B「か、彼が・・・」と健一の方を指差す。
しどろもどろなメガネくんはリュウの子分たちにはじき出され、健一が押し出されてくる。
リュウ「お前には、絶対負けねぇかんな・・・」
そんな子どもたちのやりとりに、ちょっと複雑な表情の女教師。
生徒たちは、にわかに起きた対決に興味津々。
子分たちの、リュウを応援する声。
女教師「位置について。よーい、スタート!」
女教師の合図とともに、勢いよく駆け出す健一とリュウ。
「がんばれー!」という声が、自然に生徒たちの間から漏れる。
トラックを走るうち、リードしていたリュウに、健一が次第に迫る。
カーブをきってゴールする頃には、健一の身体がリュウより一歩前に出ていた!
「あいつに勝つなんて、すごーい!」健一の周りに、女生徒たちが集まってくる。
それを遠めに眺めながら、苦虫を噛み潰した表情のリュウ・・・。
健一が顔を上げると、鈴木と目が合う。
ニッコリと笑う鈴木。
続いて、女子たちの番。
しなやかな四肢をのばし、美しく駆ける鈴木の姿を、健一はいつしか目の端に追いかけていた・・・。
SCENE 5:小学校・校門
放課後。
校門をくぐって帰ろうとする健一を、リュウとその子分たちが囲む。
子分1「ケーンちゃん!」
子分2「たーなかくん!」
後の橋のシーンもそうだけど、いかにも子分子分したこのコたち、面白い(笑)
全部で4人いるんだけど、なかなかいい味出してる。
特に、ランドセルを前後にかけていたコかな。
健一に詰め寄るリュウ。
リュウ「かけっこなんてガキの遊びじゃなくて、男と男の決着つけようぜ」
健一「・・・いいよ、オレの負けで」
子分3「お、おい!」
リュウの子分たちを押しのけて、帰ろうとする健一。
後ろから、呼び止めるリュウ。
リュウ「お前んとこ、母ちゃんしかいないんだってな!」
ちょっとムカっとした表情で、振り返る健一。
健一「・・・ああ。父ちゃん余ってたら、貸してくれよ」
意外な反応に、一瞬あきれ返るリュウたち。
リュウ「お前って・・・かわいそうなヤツだよなー」
キッと毅然とした表情で、リュウたちを睨み返す健一。

SCENE 6:帰り道・石橋
川にかかる長い石橋。
橋の下、川まではかなりの高さがある。
靴1つ分ぐらいの幅しかない狭い欄干を、バランスをとりながら歩いて渡るリュウ。
子分たちの「リュ〜ウ!リュ〜ウ!」という歓声と手拍子に応援され、橋を渡りきるリュウ。
子分たちから歓声があがる。
一種の“度胸試し”だ。
子分の1人は、3つのランドセルを持っている。
背中に背負っているのは自分の分。
胸の前に抱えて2つ持っているのは、リュウの分と、取り上げた健一の分だ。
健一の方を振り返るリュウ。
リュウ「途中で手を突いたら負け。今のうち謝るなら、許してやってもいいぞ」
そんなリュウをキッと睨み返し、無言で橋を戻り、欄干に上がる健一。
リュウ「落ちて死んでも、知らねぇかんな!」
欄干には上がってみたものの、遥か眼下の情景への恐怖で、しゃがんだ姿勢のまま動けない健一。
そんな様子を見た4人の子分たちは、健一を取り囲んで「ホラ、早く立てよ!立てーよ!立てーよ!」のコール。
視線を真下からそらし、ふと横を見る健一。
向こう側の方でクラスの女子たちが輪になって、健一たちの様子をハラハラしながら見守っている。
その中に、鈴木の姿もあった。
意を決し、少しずつ立ち上がる健一。
子分たちの「立てよ」コールは「ほら、さっさと行けよ!行けーよ!行けーよ!」へと変わっている。
一歩踏み出そうとするが、よろける健一。危うく橋から落ちかける。
リュウや子分たち、遠くの女子たちもあっと声をあげる。
見かねたリュウが「いいよもう!勘弁してやるよ!」と声をかける。
しかし健一の目は、まっすぐ前を見据えていた。
健一の口から、微かなつぶやき・・・歌声が漏れる。
「ロイカローン・・・ロンリストリーム・・・」
怪訝な表情を見せるリュウ。
リュウ「なんだこいつ!頭おかしくなったんじゃないのか!?」
腹をかかえて笑うリュウと子分たち。
だが健一は、すっくと立ち上がり、一歩ずつ、一歩ずつ・・・欄干を渡って行く。
「ゼーアプレイス!インザサン!」
健一の歌声はハッキリと大きなものとなり、一歩ずつ、しっかりと欄干を歩いていく。
自信のある歌声ではない。
恐怖に震えながら、それでも立ち向かおうとして・・・。自分を励ますかのように。
音程なんか気にしない。そんな力強さが健一の歌声にはあった。
そんな健一の様子に気づいたリュウたちは、笑うのをやめて後についていく。
「ライカロード!ダスティロード!アイゲ・・・ッ」
突然、健一の歌声が止まる。歌の歌詞を忘れてしまったのだ。
それと同時に、確実に前へと進んでいた足も止まってしまう。
「アイゲッ・・・この先、なんだったかな・・・?」
一度立ち止まったことで、健一にかかっていた勇気の魔法はとけてしまった。
再び足元の高さの恐怖に身が竦み・・・ついに、欄干に手をついてしまう。
「イエーーーー!リュウの勝ちだーー!」沸き返る子分たち。
だがリュウは、勝敗ではなく、健一の勇気に満足していた。
リュウ「ま、初めてにしては上出来だよ」
優しく健一の肩に手をかけながら。

だが健一は、欄干から飛び降りると、わき目も振らず一目散に走り去ってしまう。
子分4「お、おい!お前のランドセル!」
あっという間に走り去る健一の背中を、呆然と見送る子分たち。
一人満足そうに、それを見送る笑顔のリュウ・・・。
健一とリュウ、きっといい友達になれそうだよね。
健一の突然のダッシュは、どんな理由からなんだろう。
途中で力尽きてしまった自分が悔しかったのか?恥ずかしかったのか?
それとも、ただ単に、妹・りさこのお迎えを忘れていただけだったのか?
健一の性格的には前者のような気がするけど、話としては単純に後者のような気もするね。
SCENE 7:帰り道・草っ原
妹・りさこの手をひいて、歩いて帰ってくる健一。
りさこは保育園の感想を兄の健一に話している。
健一「カッコイイ男の子、いたか?」
りさこ「ケンタくんってコがね。お菓子をくれたから、お返しにホッペにチュウしてあげたの」
健一「お菓子でだまされるなよ。お兄ちゃん、心配だな〜」
家への、のどかな帰り道。
| 妹・りさこの手をひいて、歩いて帰ってくる健一。 りさこは保育園の感想を兄の健一に話している。 りさこ「それでね。りさこがジャンケンしようって言ったらね、みんなジャンケン知らないからりさこが教えてあげたの」 健一「カッコイイ男の子、いたか?」 りさこ「ケンタくんってコがね。お菓子をくれてね。まんなかに穴があいてて、吹くとピーッて音がするの」 健一「お菓子でだまされるなよ。お兄ちゃん、りさこの将来が心配だな〜」 りさこ「お返しに、ホッペにチュウしてあげた」 家への、のどかな帰り道・・・。 |
| (2007年11月29日改訂) |
その道の先、道端に黒いランドセルを抱えた鈴木が座っている。
それに気づいた健一は、ふと足をとめる。
近づいて、ランドセルを健一に渡す鈴木。
鈴木「これ。忘れ物」
健一「・・・ありがとう」
どんな表情をしていいかわからず、ぶっきらぼうに告げて立ち去ろうとする健一。
鈴木「太陽のあたる場所・・・」
鈴木の声に、驚いて振り返る健一。
鈴木「A place in the sun。1966年に、スティービー・ワンダーがモータウンからリリース」
なんとも言えない表情の健一。

こんなセリフ、ありえない(笑)
健一「・・・く、詳しいね」
ちょっと笑顔を浮かべる鈴木。
鈴木「あの歌、私も好きだから・・・」
それだけ言うと、立ち去っていく鈴木。
少し戸惑いながら、笑顔で手を振って、凛と歩き去っていく。
健一も、見送りながら軽く手を振る。
一部始終を見ていたりさこ。少し不思議そうに「お兄ちゃんのともだち?」
ほんの少し迷ったが、「うん」と胸を張って答える健一。
そして再び、家へと歩いて帰ってく兄と妹。
ほのかな恋心・・・初恋。
(Fin)
野原を歩いていく兄と妹の背中に重なりながら、スクリーンの向こうから小田原さんのカウントが聞こえる。
ワン・ツー・スリー・フォー!
そして幕が徐々に上がっていき、後半のステージが始まる!!