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 Break Time
 〜Digest Of "Flash and Shadow"〜

休憩。
今回はこの休憩時間に、特別な映像ってないんだよね。
DVD「Flash & Shadow」のダイジェスト映像みたいなのは流れるけど
あれは・・・1回見ればいいよねって感じで。
僕の友達もそうだけど、周りの席の人も、見てる人は少なかったなぁ。
前の曲が終わった瞬間「トイレダッシュ」する人の多いこと(笑)

もちろん、省吾の言うように「コンサートは一期一会」だから、
この映像も複数回見ることを想定しているのではないのかもしれないけど
それにしても・・・やっぱり単なる「宣伝」に思えるんだよねぇ。
それに比べると、前のアリーナツアーの「ツアーダイジェスト」みたいなのとか
ホールツアーの時の「Midnight Cab」や「Maria」みたいに、いろんな意味を考えさせてくれる
短編映像はよかった。

ちなみに僕は、この時間はもっぱらレポメモ書きに費やしてます(笑)

メモ
(秘)前半のメモ。
これをちょっと書いておくだけで、レポ書きが随分楽になります。
一言のセンテンスから、MCのネタを思い出したりできるので。

そうこうしているうちに、後半の幕が開けた。

 Stage Act.2

12.DARKNESS IN THE HEART

休憩時間の終わりから既に、暗〜く低い音色が流れている。
ファ〜ンという・・・オルガンかシンセサイザーの音っぽいSE。
客席の照明が落ち、ステージ上のピンライトからブルーのサーチライトがまわっている。
そしてそこに、さらに暗〜い音色が生音で加わっていき、演奏が始まる。

この曲は長野で1度聞いているけど・・・
初めて聴いた時は衝撃だったね。
まさかアルバム『Father's Son』からやるとは思ってなかったし。
だけど今考えれば
♪走り始めた’74〜という歌詞は「初恋」にも通じるし、このツアー全体のテーマっぽい
省吾の半生を語るロックナンバーのひとつだからね。
レパートリーに加わったのも自然な流れだったのかも。

この曲は、わりとオリジナルに近い、違和感のないアレンジですね。
日替わり曲のもう一方、「マイホームタウン」がオリジナルよりも
少しロックっぽく硬質化しているような感じがするので、もう少し“遊び”があってもいいかも。

「J.BOY」や「勝利への道」なんかもそうだけど、ツアーによって大胆に
アレンジが変わっていたりするのは、まさに「その時」を表現している気がして
個人的には歓迎なんですよね。
これは好みが分かれるところかもしれないけど、人によっては「オリジナルのままがいい」
という向きもあると思う。だけど、「CDそのまんま再現」を聴きたいなら
CD聴いてるだけと一緒だと思うんだけどね。

どこかしら、ギターソロが強調されていたり、オリジナルとは違うテンポだったり
地味な変化でもいい。
そういうの見つけたら、なんか嬉しいんだよね。

長野の時と大きく変わったところは、バックの映像かな。
ツアー中、途中のどこかから変わったらしいとは聞いてたんだけど。
長野の時の背景の映像はステージ上の生の映像だったけど
今回はモノクロとセピア色の中間っぽい色合いの色彩で
ツアーの模様を切り取った写真がスライドになっていました。
ツアートラックとか、楽屋のギターとか、省吾のシルエットとか。
ステージセット設置中の会場の風景もあったかな。
それがまた、歌われている歌詞とバッチリフィットしていい感じで。
ある意味これは、コンサートツアーを陰で支えるスタッフたちを称えた映像だね。
正直、この映像が見られただけでも今日来た価値があるなぁと思いましたね。
こういうのは、本当にもうツアー中にしか観られないものだと思うし。

13.Thank You

町支さんのギターから始まるこの曲!
すっかりお馴染みというか、サウンドがとにかくカッコイイ!

アルバム『MY FIRST LOVE』の中の曲で、最初の印象がライブで大きく変わった曲は
この曲が一番かな。
正直、最初はね。「ヘンな歌」と思ったんだよね(笑)
「手首切って救急病院って・・・なんじゃそりゃ」と思ったんだけど
今では、単純に「サウンドがカッコイイ」と思う!シンプルなロックテイストで。

ローリングストーンズを好きな友達が、長田さんの演奏を観て
そのアクションがキースを意識してるみたいだと語ったんだけど・・・
僕はストーンズの名前は当然知ってるけど、音楽はよく知らない。
だけど、そんな世界の大御所バンドにも匹敵するぐらい
今回のツアーバンドは最高だし、“最高級”だと思う!

あと、セリフのところは、なんか妙に盛り上がるんだよね。
なんかちょっとひやかしっぽい、ヘンな歓声があがります(笑)

あと、背景にプロモーションフィルムというか、短編映画「TWO LOVE」の
「君と歩いた道」(タイトルは別曲だけど、内容は「Thank you」らしい)
にもなっている映像が流れます。
これ・・・前に観たときと微妙にシーンが変わっていたような?
ヒロイン(大人のほう)が、画家(?)からお金(バイト料?)をもらって
ショッキングピンクのドレス(?)で街を走り回るシーンがあるんだけど
その後に、路地裏で子犬(子猫?)を見つけるシーンがあって。
このシーン、初めて観たような気がした。

ちなみに短編映画は、僕は観に行く予定はありません。
近くでやってくれないしさ・・・。そのうちDVDが出ると思うので、そちらを期待。

曲が終わり、福田さんのオルガンソロ。
このソロ、いかにも福田さん!って感じの音色だね。

オルガンとシンセサイザー、福田裕彦!
そしてサキソフォン、古村敏比古!
福田君にしても古村君にしても、ステージの上ではバリバリの
ロックミュージシャンですが、家に帰ればちゃんと父親やっています。
次の2曲の歌は、父親をテーマにした歌です。
父親になるってことはとても素晴らしいことだけど、その反面、
失ったものや、諦めたものがあるんだと思う。
でも・・・彼らはしっかり父親やってます。

前に参加したときと、微妙に言い回しが変わってきてますね。
「主人公は父親であり、家族であり・・・」と言ってたけど、今回は父親オンリーで。

この枠では、前はオルガンを弾いている福田さんがメインで紹介されていた気がするんだけど
今回は古村さんも紹介されていました。会場に家族が来ていた、とかなのかな?

14.I am a father

カッコイイ曲といえば、やっぱりこの曲!!
この曲のサウンドはとにかクールで、最初のコーラスも、激しいギターも
サビの盛り上がりも、すべてがカッコイイ。
僕の好きな省吾のロックナンバーを時代別にあげるとするなら・・・
1970年代 恋人達の舗道青春のヴィジョン
1980年代 終りなき疾走BLOOD LINE
1990年代 MY OLD 50'S GUITAR詩人の鐘
ON THE ROAD 2001 モノクロームの虹…to be "Kissin' you"
そして、この「I am a father」ですね。
これから先も、長くライブの定番になってほしい曲です。
僕もいつか父親になって、この曲で思い切り叫んで、感動したいな。

客席の盛り上がりは、この曲が今日の最高値だったと思う。

今はまだ父親ではないけど、それでも爆発的に盛り上がるけどね(笑)
叫びすぎて、酸欠になりそうでした・・・(笑)

15.花火

そんな酸欠状態にはちょうどいい(?)スローなナンバー。
大量に酸素を欲する身体を軽く揺らしながら聴くのがマイ・フェイバリットです。
省吾はこの曲の時、マイクスタンドを前に立って、ちょっと足踏み
するような感じのダンスをしながら歌ってました。

あと、前に友達に聞いてたことがあって。
この曲では、「省吾が指で打ち上げ花火っぽいアクションをするよ」と。
2日間で、1回しかやりませんでした。
♪夏の夜空に〜花火〜のところです。
右手の人差し指をたてて上に上げていって、最後にパッと開く・・・。
それらしい動きは、一番最初の♪花火〜の時の1回だけでした。
その後は動きなし。(ちなみに、翌日の最終日は1度もなし)
一番最後の時は、バックの映像で花火が上がるのを讃えるかのように
両手を開いていました。

最注目していたのは指の動きだけど、それ以外にもちゃんと曲を聴いていましたよ。
この曲、初めて「いい曲だな」と思ったかも。
前にもちょっとそう思ったフシはあったけど、今日はしみじみとそう思ったので。
「娘が二十歳」とか、「息子がハイスクール」のあたりは、まだまだ感情移入のしにくい
歌詞なんだけど、全体的なサウンドがJazzyでオシャレだよね。
過去の曲の系統でいうと「Edge of the knife」みたいな感じでさ。

間奏の古村さんのサックスも、とてもいい“濡れ具合”でね。
僕は、管楽器の良さはこの“濡れ具合”だと思うんだよね。
僕個人の感覚なので説明が難しいけど、プアーッと吹いた音を聴いた時に
パッと頭の中に広がるのが「青空の高原」なのか、「霧の煙る波止場」なのか。
僕にとってのサックスのイメージって、圧倒的に後者なんだよね。
クリフォード・ブラウンにせよ、ケニーGにせよ。
もちろん、古村敏比古というサックス吹きに関しても。
その音色から喚起されるのは、“紫煙くゆらす港”とか、“場末のBar”なんだよね。
それを表現すると“濡れ具合”という言葉になるんだけど・・・
こう、なんというか、音がしっとりしてる感じ。
音だけが開放的に突き抜けるんじゃなくて、空気全体を震わすような・・・
まさに、バイブレーションを、波形を放つって感じで。
余計な説明が増えたけど・・・結局何が言いたいかというと、古村さんのサックスが
とても心地よい音色だねってことです(笑)

曲が終わり、今度は小島さんのピアノが優しい音色を奏でる。

父親をテーマにした歌を2曲聴いてもらいました。
皆さんもご存知の通り、オレには実際には子どもはいません。
それによって、「自分の人生が完結しないんじゃないか」とか
「パズルの最後のピースが欠けたままなんじゃないか」とか・・・
そんなふうに感じたことは、ありません。

この時、僕の左斜め前方、3つか4つ離れた席の女性が
小さく手をたたいていました。
人の人生を勝手に想像したりするのは失礼かもしれないけど・・・
彼女にもきっと、省吾と同じように子どもがいないんだろう。
そしておそらくそれは、望んでも子宝を授かることができなかった・・・
そんな感慨をこめた拍手だったと思えた。
僕の友達にも、そういう境遇の方がいます。
不思議なもので・・・生命って、親の現況とか思惑に関係なく芽生えるものなんだね。
幼い学生同士のカップルの間に、望まれない形で産まれてきたり。
かと思えば、出産・育児の適齢を迎えて、いよいよ・・・という時に
なかなか運気に恵まれなかったり・・・。

命って、同じく、等しくひとつだけど、そこには様々な形がある。
健康で、家庭に恵まれ、何不自由ない命。
重い病を患ってしまった命。
他人を傷つけ、その尊厳を弄ぶ命。
意味もなく、無残に奪われてしまう命・・・。
いろいろな形があるけど、それは等しくひとつの命。
だからこそ大切にしなければならないし、守らなければ、守られなければならない。
昨今の悲劇的な事件を耳にするたび、命の尊厳について
あらためて社会全体が考え直さなければならない時期にきていると思う。

かすかな、小さな拍手を聞いて、そんなふうに思った。

MCはまだ続きます。

人それぞれいろんな人生があって。
でも、ひとつ言えるのは、最近のニュースを聞いて
「子どもを持つ人たちは胸を痛めているんだろうなぁ」ということで。
子どもってのは、社会や大人たちが、守ってあげなきゃならない。
最近では、「誰の子どもを育てても同じ」なんだなぁと思います。
次に演奏する曲は、1986年の『J.BOY』というアルバムに入っている曲です。
スローなバラードですが、みんな知ってくれていると思うので
ぜひみんな一緒に大きな声で、子どもたちのために歌ってほしい。

16.SWEET LITTLE DARLIN'

しっとりと、心に染みるバラード。
「大声で」と言われてもやっぱり憚られるので、コッソリと口ずさみました。
この曲にも幾つかの想い出があるので・・・
とても染みますね。
曲の最後の、長田さんのギターソロが心をうつ・・・。

曲の最後に、背景の映像が子どもたちの写真を映すんですが・・・
そのうちのひとつ、あれはきっと省吾の子どもの頃の写真ですよね?
『浜田省吾事典』の343ページ、省吾が3歳の頃の顔とよく似てる。

あともうひとつ、女の子の笑顔の写真があるんですが
友達の娘さんとよく似てるんですよね。
僕には子どもがいるわけじゃないし、もちろん友達の子どもを育てているわけではないけど
省吾が言うように、誰の子どもを育てても同じ・・・ということなのかなぁと。
社会や地域がみんなで、子どもたちを守ってて、育ててあげなきゃいけないということなんですよね。
どこかの小学校が、「安全のために子どもの携帯電話所持を解禁した」ってニュースがあったけど
そういうことじゃないんだよね。周りの大人たちが、関心を持つってことが大事なんだよね。

17.MONEY

激しいギターから始まるイントロ!
そして!!
ドカーンという爆音ともに、ステージの前方から激しい火柱が!!!!
一瞬の閃光に、何が起こったのか、一瞬わかりませんでした。
本当に驚いた。

閃光と轟音と火柱が!!
たしか、左右各4本で、計8本だったと思う・・・。

今回のツアーで、この最終・さいたま公演だけに用意された特効(特殊効果)らしいです。
スタッフに拍手!!すごかったですー!
ちなみにこの火柱、曲の最後の方のソロのあたりでもドカドカ噴き出してました。
ギターソロで前に来ていた町支さんあたり、こんがりと焼けてるんじゃないかってぐらい(笑)

そして、この枠といえば・・・憑き物 ツキモノのアレ。
いわゆるストーカーカメラ(笑)
演奏が始まると、ステージソデからスルスルとステージ上に出没。
今回も・・・というか、今回は明らかに邪魔でした。
僕の位置は、ステージに向かってナナメの位置。
これがまた、ちょうどピッタリという感じでカブるんだよね。

邪魔やろが!
カブりまくり

邪魔やろが!!と叫びたいぐらい。
ってか、叫んでたかも(怒)

今回のツアーで最大の失敗がアレだと思うなぁ・・・。
この企画、誰が発案して誰がGoを出したのかわからないけど
今後もう二度とやってほしくないです。
最接近のカメラアングルよりも、ステージの上の生のミュージシャンの姿を楽しませてほしい。

長野や名古屋の時よりは、そりゃあ多少はマシになってた気がします。
じーっと固定せずに動こうという感じは少しは見えたし、「町支さんのソロの時は町支さんを」
というように、曲の展開に応じて視点を変えていた。
だけどそれが、逆に目に付くんだよね。
ソロの時は、僕もソロ演奏中のプレイヤーを見たいわけですよ。
そこでカブられたら、もうガックリ。
映像の中のドアップよりも、多少遠くても、生の姿を見たいんです。

♪愛してる愛してる〜のところでは、省吾のドアップ。
カメラ目線で、自分を指差す省吾。なんか違ーう!!
僕はそういうモノを求めてるわけじゃないんだ。
(女性ファンは嬉しいのかもしれないけど)

♪いつかアイツの足元にビッグマネ〜で、サッと足元を映すストーカーカメラ。
違ーう!!そういう、「イカニモ」な演出は、省吾のステージには似合わない。
(アレは指示じゃなく、カメラウーマンの「あいちゃん」の判断だと思う)

しかも今回も、長野の時同様、ザーザーのノイズ画面。
アレはやっぱり意図してやってたのか?
それにしては、あまりにも見づらい。

ヒドすぎる
やっぱりこんな感じ。

あと、一番最後。
曲のラストで♪マネ〜と繰り返すあたり。
火柱がドカドカあがる中で、省吾の前にベッタリとはりついているストーカーカメラ。
・・・。
映ってねぇんだよ!!(怒)
この時、スクリーンの画像は真っ暗で、何も映ってない。
なのにそんなにベッタリと張り付く必要がどこにある?
曲のラストのいいとこで、こっちも叫んで盛り上がってるわけよ。
邪魔しないでよ!と言いたい。

試行錯誤の試みだったとは思うけど、明らかな失敗ということで
今後もうやらないでほしいと思う。
何も「あいちゃん」を責めるわけではないけど、やっぱり失敗だよ、アレは。
メンバーのドアップは、クレーンや、各カメラの望遠で充分です。
もしやるなら、ステージの下(スチールカメラマンの内藤さんの位置ね)から。
その位置からでも、充分あおりでの画は撮れるはず。

曲自体の印象は、あまりないなぁ。
火柱と、お邪魔カメラの印象が強すぎて。

18.J.BOY

曲のイントロのところでの
「Show me…Show me…Show me your way, J.BOY!」
ってやつ。最近アレ言わないときがあるね。けっこう好きなんだけど。

この曲に関しては、何も言うことはありませんね。
やっぱりすごい盛り上がりです。
途中で会場内を見渡してみると、みんな拳をふりあげて、思い思いに
「一本指」だったり「グー」だったり「J」だったり・・・
想いをぶつけていました。ものすごい圧倒的な空気です。

過去のレポートを読み返すと、この曲の部分の感想ってほとんどが短い。
それはきっと、この盛り上がりを的確に表現する語彙を僕が持っていないから。
この曲こそ、間違いなく「浜田省吾のライブを象徴する1曲」ですね。

19.家路

この曲が、僕にとってはこの夜の最大のハイライト。
この夜、唯一泣いてしまった曲でした。
イントロのピアノの中、歌いだす前に
一緒に歌ってくれる?
と言った省吾。
前回の名古屋では、この曲の時に座る人もいたりして
思い思いのライブの過ごし方があるんだということに感銘を受けたものだった。
それはそれでいい。
だけど今夜の僕の気分は、どうにも止めようがない。
言葉にできない数々の想いが、まっすぐにステージに向かっている。
ライブが、ツアーが、ついに終わってしまうんだ・・・。
その寂しさが、急激にこみ上げてくる。

曲の序盤。
♪手に入れたすべてのもの やがて失うのに・・・のところ。
省吾の姿が、右側から(つまり、僕の側から見える生の姿とは反対側)の画で
スクリーンに大写しになる。
そのあたりで、なんと言ったらいいのかな・・・
ヒストリーアルバム『The History of Shogo Hamada "Since 1975"』のCMで
やっていた様な、手の平から零れ落ちる砂を見つめているような姿をしていて。
その姿が、なんとも言えず愛おしかった。

僕の大好きな姿の「浜田省吾」がそこにある悦び
去りゆく時間を惜しむかのように・・・

その手の平から零れ落ちるものは、なんなのだろうか。
この、興奮と感動に満ちたライブという名の時間なのか。
日々刻々と過ぎていく、人生という名の時代なのか。
失意に満ちた、苦渋の日々という名の刹那なのか。
実際には目には見えないけど、何かが確実に、その手の平から零れ落ちていた。
それを見ていたら、なんとも言えない、感情の激流が押し寄せてきて。
涙があふれて止まらなくなった。

僕の大好きな「浜田省吾」という存在が、紛れもなく同じ空間の中にいて、そして声をからして歌っている。
それを支えるバンドメンバーの演奏は、まさに“最高級”の名に恥じない旋律を奏でている。
それらステージのすべてを影で支えるスタッフたちが、それぞれの場所で動いている。
そして、その場面を構成している要素のひとつとして僕たちオーディエンスがいる・・・。
手をのばせば、すぐに届く距離にそれがある。
実際に手を差し伸べてみると、僕の手の中にすっぽりとステージが包み込めた。
そこでは、感動と一言で表現するにはあまりにも素晴らしすぎる“名画”がある。
今この瞬間、そこで動いて、歌っている。演奏している。
その、宝物のような景色が、あと数時間で失われてしまう。
そんな激流が、今この瞬間を楽しもうという感情よりも強くこみ上げてくる。
時間よ止まれ。
本当に、心からそう願った。
今この瞬間の感動を、時間よ連れ去らないでくれ!
お願いだから、いつまでもこの空間の中で漂わせてよ。
何度も観ているはずなのに、何度も聴いているはずなのに。
今までのどの瞬間よりも強く、そう思った。
もしかしたら、もう今夜限りでこのバンドは消滅してしまって、もう二度と観ることは出来ない。
そんなふうにさえ思えた。
涙で滲んだステージは、さらにキラキラと光を増して、僕の想いになど全く気付かないように
無情にも、淡々と時計の針を進めていくように思える。
お願いだから・・・
お願いだから、いつまでもこのまま歌い続けてよ。
そこにいてよ。
離れていかないでよ・・・。

さしのべた手の平から、時間はどんどん零れ落ちていく。
止まれと強く願えば願うほど、そのうねりはさらに勢いを増して胸の痛みを押し流していく。

曲の途中、一度、間奏を終えて演奏がとまる瞬間がある。
僕も「省吾ー!」と叫びたいのに、涙でいっぱいになって言葉が出てこなかった。

溢れ続ける涙を拭う時間も惜しいほど、この瞬間を心に焼き付けようと思った。
長い旅を終えてそれぞれの家路に帰る時が来ても、いつでもこの瞬間を思い出せるように。
いつまでもこの、涙の海で溢れそうな瞬間の記憶を忘れないために。

曲が終わり、福田さんの奏でるオルガンの音色が荘厳な空気を作り出す。

だんだんクリスマスが近づいてきましたが・・・
ひとつだけ思うのはね、この時期にはもう、イラクに派遣された自衛隊の方々は
本当は日本に帰ってきているはずだったんだよね。
だけど11月の首脳会談で任期が延びてしまって。
たぶん今日集まってくれた17,000人以上の方々も、オレたちスタッフも同じ気持ちだと思うけど
どうか彼らが、誰一人欠けることなく、傷ついたり、死んだりすることもなく
無事に帰ってきてきてくれることを祈ってます。
そしてそれと同じぐらい、彼らが、イラクの人たちを、事故であろうとなんであろうと
傷つけたり、殺したりすることなく帰ってきてくれることを望んでます。
これは決して政治的な発言ではなくて、一市民としてそう思っているということです。
さて。だんだんとお別れの時間が近づいてきて・・・
何かお別れの言葉を言おうと思うんだけど。
誰の人生も、周りの人から見れば恵まれていると思える人生でも
生きていくってことはすこぐ大変で、大切なことだから。
だから簡単なことは言えないんだけど・・・
その代わりにこの歌を、お別れの言葉にします。

20.日はまた昇る

そんなコメントから始まったこの曲。
前の「家路」で僕はもう完全に自我を喪失してしまっているので
もはや心の中は空っぽ。
何もない空虚な状態。
そこに流れてくる優しいメロディが、草原を吹き渡る風のようで。
背景のスクリーンも、そんな感じの心穏やかな映像が流れている。
緑の草原を吹き渡る風。小川のせせらぎ。
力強く昇り、やがて静かに沈んでいく太陽。
そうか・・・「この曲はそういうことなのか」と、ふと閃いた。
コンサートの1曲目、「ある晴れた夏の日の午後」。
そこから流れるストーリーは、全てがつながっているんだと。
様々な旅(曲)を経て、「家路」をたどり、やがてたどり着いた場所。
そこにはきっと、どんな人生であろうと、誰の頭上にも同じように日はまた昇る。
そしてその願いはやがて、ひとつの芽になっていく。
映像の最後の、たったひとつの芽生えは、そういうことなんだろう。
某ヒット曲じゃないけど、「世界にひとつだけ」の人生なんだよね。
特別なわけじゃなくて、誰の人生も、それこそが尊いんだと。
ただひとつしかない自分だけのものだから大切にしなきゃならないんだと。

ちょっと残念だったのは、周りの人たちが、曲が始まると同時にサッと座ったこと。
たしかにスローなナンバーではあるけど・・・
この曲はやっぱり、立ったまま聴きたい。
前に書いた「それぞれの楽しみ方」という内容に矛盾するけど。
後ろの人が座ると、どうしても気を遣って座りたくなるけど
この曲は立ったままで、手拍子をしながら聴き(歌い)ました。

手拍子をしながら、心地よい音楽に身を委ねて・・・
先ほどまでの激しい感情の起伏が、やがて静かに横たわっていくのを感じました。
興奮の渦がスーッとひいていくかのようで、とても穏やかな気分。

秋に始まったこのコンサートツアーも、もうすぐ終わろうとしています。
このステージを支えてくれている本当の意味でのスターは、90数名のツアークルーと
それぞれの街のスタッフたちです。彼らは身体をはって、このツアーを支えてくれました。
本当に素晴らしいスタッフたちです。彼らに、大きな拍手を。
そして、どこの街に行っても感じることですが・・・
素晴らしいオーディエンスに恵まれて幸せだなぁと思います。
君たち一人一人の声援を誇りに、ここまでやってきたし、これからも音楽を続けていきたいと思います。
今夜はどうもありがとう。

バンドの演奏は「Prelude of "Blue Sky"」へ。
全ての方向のオーディエンスに笑顔で手を振りながら、去っていく省吾。
長い戦いを終えるかのような戦慄にも似た演奏。このシーン、とても好きです。

客席は、あっという間にアンコールを求める熱い手拍子で埋まっていく。
終幕と同時に、トイレへダッシュする人の数もかなりの数だけど・・・(笑)


4.コンサートレポート後編〜Encoreへ続く