可能の王国の夢と理想と現実
『ペイ・フォワード』
| 『ペイ・フォワード/可能の王国』を見ました。 感動のヒューマンドラマという噂にたぐわぬ素晴らしい作品でした。 ラブ・ストーリーもアリとは思っていなかったのでちょっと驚きましたが。 このコラムには、重要なネタバレを含みます。 今後、この映画を観てみたいと思う方は読まないほうがいいかと思います。 映画を観たあとに読んでみてくださいね。 |
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| ペイ・フォワード/可能の王国(2000年アメリカ/ヒューマンドラマ) <ストーリー> 中学1年生になった最初の日、社会科のシモネット先生が出した課題は 「この世の中を少しでも良くするためには何をしたらいいか?」というもの。 そして、トレバー少年が思いついたのが「ペイ・フォワード」というアイデアだった。 人から受けた恩を、誰か他の3人に「渡す」ことによって世の中がよくなっていくと 考えたのだ。この考えを実現させようとトレバーは懸命に努力する。 ホームレスを家に招き、食事とお金を与え、更正させようとする。 だが、その思いは裏切られる(実は後に彼は更正するのだが)。 次にトレバー少年が選んだのがシモネット先生。 恋に臆病な先生と母親との仲をとりもとうとしたのだ。 その願いがようやく実った時、トレバーはクラスメイトにナイフで刺されてしまう。 悲しみにくれる母アーリーンの前に、トレバーの思いを受け継いだ人々が トレバーの死を惜しみ無数の灯火をかかげるのだった…。 |
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天才子役・ハーレイ君がまた素晴らしい演技を見せてくれました。 でも、それ以上によかったのがストーリー。 「世界を変えていこう」というテーマを2つの方法で描いています。 |
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作品のなげかけた大きな問題提起 「この世の中を少しでも良くするためには何をしたらいいか?」というテーマ。 そのアイデア自体は、日本でも「情けは人のためならず」とか、キリスト教の 「汝の隣人を愛せ」など昔からあるものだが、ユニークなのは、その対象が 3人だけでいいこと。「相手が3人ぐらいだったら、自分にも何かいいことが できるかもしれない」と思えてしまうのです。 この点で素晴らしい問題提起をしてくれていると思えます。 このアイデアは初めはユートピア的(意味がわからない人は辞書で調べましょう) すぎると非難されますが、知らず知らずのうちに人から人へと伝わっていきます。 でも、いきなり施しを受けた人の反応は様々です。 新車のジャガーを赤の他人から気前良くプレゼントされれば誰だって驚きます。 自殺願望の女性は一杯のコーヒーで心のやすらぎを取り戻します。 要は、自分のできる範囲で、できることをするということなのです。 それが、与えてくれた恩に対する自分の感謝の気持ちだからです。 いつも感謝の気持ちを忘れないこと。そして、他の誰かに同じように愛をもって 接することができるように。それが「ペイ・フォワード」の本当の意義なのです。 人に愛をもって接すること。 それはすごく難しいですが、少しずつ、できることからやってみたいものです。 |
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評価の分かれるラストシーン この作品で大きく評価が分かれるとすれば、やはりラストシーンでしょう。 トレバーは、死ぬべきだったのかどうか。 もし彼が生きていた場合 問題なくハッピーエンドですね。 アル中を克服した母と、新しい父親と3人で一緒に暮らしていくのでしょう。 そうすることで、全体が穏やかな作品になると思います。『キッド』のように。 彼が死んでしまうことの意義 彼が死ぬことは結局、愛するものを失うことの悲しみを表現しているのでしょう。 最後に、アーリーンとシモネット先生の2人が眺めるテレビで、画面の中から トレバーが語りかけること。難しいけど、少しずつ変えていこうということ。 それを伝えたいのでしょうか。 実は僕は、トレバーの死に納得できない人間の1人です。 「なにも、殺さなくても…」と思ってしまう。 せっかく願いがかなったのに、凶刃で世界が閉ざされてしまった。 それはすごく悲しい事なんです。 電車の中で、奔放な中高生の行いを注意しただけで殺されてしまう現代日本。 この映画は今の日本の現状と全く同じなんです。 そこには全く「救い」がない。 理想と夢をかかげて、それにむかって努力しようとする。 だけど、一握りの狂った欲望でそれが無残にも引き裂かれてしまう。 正しい行いをしようとした者がバカをみるような現状は変えなければならない。 そのことを反面教師的に教えようとしているのか。 でも、それだったらあまりにも悲しい。 子供同士のケンカにとっさにナイフが出てくるような、そんな危険な学校なら 親としては子供を安心して通わせることは出来ないと思うんだよね。 死という最悪の結論ではなく、何かもっと他の方法でそれを表現してほしかった。 夢や希望の中で、若者が輝ける未来を描くことができる。 映画って夢のあるものだし、それができると思う。 だからこそ、いくらユートピア的すぎても、そうしてほしかった。 描き出す結論が、もっと違っていたら。 「世界を変えていこう」というとてつもないテーマを、朗らかに描くことに 終始してくれていたら。そうしたら5ツ★をつけてもよかったのにな。 それだけがちょっと残念です。 |
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![]() 2002/4/18 |
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