海になれない青(2004.11.11)


海は時々見に行っているけど、そこで感じられるものは昔ほど多様ではなくなっているのかもしれない。
それは僕が大人になっているのか、鋭さを失っているのか、
それとも、考えることよりも先に、感じることが自然になっているからなのか。
それはわからない。

ただひとつ確実に言えるのは、昔ほど海に対して受けるインスピレーションが多くないという事だ。
それだけは確実に言える。

以前ほど難しい文章も思い浮かばないし、世間や自分の身の上についてやりきれない思いを嘆くこともない。
ただ自然に、そこにある景色、肌をうつ風の冷たさを感じられるようになった。
それはそれで、そこにあるものだということが。
言葉にするのは難しいが、それこそが僕がここで得たものなのかもしれない。

ここに文章を書くのは、実に2年ぶりになる。
この2年間で、変わったことと変わらないことがある。
それはここに書く必要はないし、書くつもりもない。
それは僕だけが認識していればいいことだ。

岸壁には、先月の台風で座礁した海王丸2世が今も寂しげにその船体を傾けている。

富山港沖で座礁している海王丸2世。写真は10月22日のもの

伝えきれないもどしかさが、余計に思いを募らせるように流されながら、それでも海に近づくほどに濁る河を流れていく。
空と海は決して交わることがないし、どれだけ空に憧れても青は空にはなれないし、海にもなれない。
青はただ青として、その身を横たえていくのみだ。

今の僕には、この海は優し過ぎるし、冷淡に過ぎる。
僕の大好きなこの海とも、しばらくお別れだ。

止まっていた時計が動き出した。
今度こそは、その動きが止まらないことを祈っている。


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