宮崎駿監督の死生観を投じた
『君たちはどう生きるか』
| 話題の新作映画『君たちはどう生きるか』を観ました。 以下、ネタバレありの感想となります。まだ未試聴の方はご注意を。 映画の内容については、全く知らないで観た方がいいと思います。 始まった瞬間、「ああ、こういう時代なんだ」という驚きから始まるし。 これから観に行く予定のある方は、ぜひまっさらな状態で観ることをオススメします。 このコラムには、重要なネタバレを含みます。 今後、この映画を観てみたいと思う方はなるべく読まないことをオススメします。 |
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| 君たちはどう生きるか(2023年日本/東宝) <監督・原作・脚本> 宮ア駿 <ストーリー> 第2次世界大戦中の東京。病院の火事で母親を失った牧眞人。 父の再婚に際し、東京から田舎の屋敷へ移り住むことに。 そこは母の生家であり、父の再婚相手は母の妹だった。 複雑な思いを抱えた眞人は不気味なアオサギに導かれ、異世界に足を踏み入れることになるのだった…。 <出演> 牧眞人/山時聡真 アオサギ/菅田将暉 若き日のキリコ/柴咲コウ ヒミ/あいみょん 夏子/木村佳乃 牧正一/木村拓哉 老ペリカン/小林薫 インコ王/國村隼 大叔父/火野正平 |
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宮崎駿監督が引退を撤回して『風立ちぬ』以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。 宮崎監督が少年時代に読み愛読書となった吉野源三郎の著書『君たちはどう生きるか』から タイトルは借りたものとなっているが、宮崎監督自身が原作・脚本も務めたオリジナルストーリーです。 といっても、その本を読んだことがないので内容はわからないけど。 タイトル画となっているアオサギの絵以外は公開日までまったく情報解禁がなく、 どんな内容かまったく知らずの鑑賞でした。 ストーリーはちょっと難解なので賛否両論ありそうですが、個人的には好きです。 <過去作のオマージュシーン> こういうの、観終わったらすぐに喋りたくなるよね(笑) 過去の作品をオマージュしたシーンが多数あり、そういうところはファンサービスかな。 眞人の父親は戦闘機を作る工場の幹部。 家に運び込まれるのは戦闘機のキャノピー(操縦席のガラス窓)だよね。 戦闘機や第二次大戦から物語が始まるのは、前作『風立ちぬ』からはじめて 過去の物語へとどんどんさかのぼっていく行程に思えました。 前半、眞人が弓を放ちながら走るシーンは『もののけ姫』。 下の世界に下りてすぐ、海の彼方に船がゆらめくシーンは『紅の豚』かな。 飛空艇が雲のように見える墓場のシーンを思い出しました。 眞人がキリコのもとで働くシーンは『千と千尋の神隠し』かな。 後半は『ラピュタ』を思い出すシーンが多かったよね。 アオサギにぶら下がって逃げるシーンはそのまんまフラップターだし。 アオサギが「重い〜!」って言うドーラ船長のセリフのおまけつき。 眞人が塔の外を登っていくシーンはまんまラピュタの外壁だし。 「きっと草をつかんで落ちるぞ」と思ったら、期待通りの展開でニヤリとしました。 生々しく揺らめく炎とか、『ハウルの動く城』を思い起こすシーンなんかもあった気がします。 <物語の舞台> 東京への空襲は1944年11月から終戦の1945年8月15日まで106回行われており 宮ア駿監督自身も幼少の頃に空襲を経験しているそうです。 母の死後、眞人は東京を離れて母親の故郷に疎開します。 駅から父親が乗ったバスには「大沼町」と書かれており、同名のまちは茨城県日立市に存在しているそうです。 作中では疎開先の地名は明示されていないが、宮ア駿監督自身も戦時中に疎開を経験しており 小学3年生までは栃木県宇都宮市の疎開先で暮らしていたそうです。 茨城か宇都宮か、このあたりが物語のモチーフになっていそうな感じです。 <声優> これに関しては、最後までやっぱり宮崎監督の信念を貫いてきたね。 宮崎監督がプロの監督を嫌いというのは有名な話で、今作もそれは続いていました。 牧眞人/山時聡真 アオサギ/菅田将暉 若き日のキリコ/柴咲コウ ヒミ/あいみょん 夏子/木村佳乃 牧正一/木村拓哉 老ペリカン/小林薫 インコ王/國村隼 大叔父/火野正平 主役の眞人の声は山時聡真さん。僕は知らないんだけど、若手俳優の方のようです。 この人はあまり気にならなかったかな。 『風立ちぬ』の庵野さんがひどすぎただけに…(苦笑) キャストで一番気になったのは、あいみょんが演じたヒミ。 物語中盤から登場してくるんだけど、あまりの棒っぷりにびっくりしました。 あれはちょっと、いくらなんでもひどすぎないかな。 他の人がどうこうの前に、あいみょんがひどすぎて他が全く印象に残らないぐらい(笑) 奥さんもこれに関しては同意見で「なんであいみょんが声優やってたん」と気にしてました。 主題歌を歌ってるわけでもないし、どういう意図での起用かは全く不明だけど アニメ好きとしては、やっぱりプロの声優さんをつかってほしいなぁと思います。 <石の産屋> 眞人が下の世界に下りた時、扉によって封印された石の遺跡がありました。 あれは「天岩戸(あまのいわと)」ですね。 日本神話に出てくる洞窟で、太陽神である天照大御神が隠れたところです。 この世とあの世、生の世界と死の世界をつなぐ門なので 宮崎監督なりの死生観とか、これから大きなテーマを描いていくのかなと思いました。 塔の中の産屋に眞人が足を踏み入れた時、夏子は眞人を拒絶しようとするけど 眞人自身は初めて夏子を「母」と呼び、受け入れていく重要なシーンとなりました。 このあたりはイザナミノミコトとか、神話に絡めている感じでした。 <13個の積木> 物語の最後に登場する大叔父。 このキャラクターは、宮崎監督自身を投影したものなんじゃないかと感じました。 製作に打ち込むあまり世俗を離れ、空想の世界をアニメとして描いていく。 そんな仙人のようなキャラクターは、宮崎監督そのもののような気がします。 彼は、世界の均衡を眞人に委ねようとします。 「ここに13個の積木がある。これをつかって世界に均衡をもたらしてくれ」と跡を託そうとします。 インコ大王によってそれは断ち切られてしまうんだけど、眞人自身もそれを断っていました。 積木は過去の積み重ねだと言って破砕されてしまうんだけど なんで13個なのか、気になりました。 これはつまり、宮崎監督自身の主な監督作品のことなんじゃないかなと思いました。
これらは宮崎監督にとっては過去の遺物であり、それを乗り越えて これから先の未来を、跡を継ぐ者たちに作っていってほしい。 過去の遺物なんか、壊してしまってもいい。 その先に描く未来は、「どう生きるか」は、君たち自身が描いていくのだ。 そんな願いが込められているのかなと解釈しました。 帰還した眞人のポケットの中には、平原で拾った石がひとつありました。 「あちらの世界の記憶は消えてしまう」とアオサギに言われますが その石を持っていることで記憶を持ち続けているとも思えます。 過去の遺物であったとしても、なにかひとつでも気に入ったもの(作品)があれば それを人生の友、あるいはお守りとして連れて行ってもらえると嬉しい。 そんな解釈は飛躍しすぎですかね。 <おわり> 物語は、眞人が東京に戻るシーンで終わります。 エンディングテーマは米津玄師さんの新曲「地球儀」。 徳島でのライブでは聞けなかったけど、いい曲ですね。 ジブリの映画では、だいたい最後に「おわり」というテロップが出るんですが 今回はそれがありませんでした。 今までの「おわり」は「次、またね」という意味あいもありましたが 今回はそれがなかったことで、本当に最後なんだと感じました。 「ああ、これでジブリ(=宮崎監督の映画)は本当に終わりなんだなぁ」という感慨がありました。 今回はグッズも全然売ってなかった(売り場にはポスターだけでした)し これが最後と思うと、やっぱりちょっと寂しいな。 パンフレットが後日出るらしいので、それを買いがてら 上映期間の後半ぐらいにもう一度観に行こうかな。 (2023/9/25再観) やっぱり全体の概要がわかってから観ると、だいぶ全体が見えてきました。 最初に見た時に感じた解釈は、おおむね変わらないかな。 「遺書」というと大袈裟だけど、宮崎監督自身がアニメを通じて描きたかったものが ここに凝縮されているのかなと思いました。 |
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![]() 2023/8/1 2023/9/29加筆 |
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