TOMORROW


「明日」って 一体何なんだろうって思うんだ

月が夜の西に沈み 朝の東に新しい太陽が顔を見せるとき
それが明日ってことなんだろ
人はみんなそう言ってあしらうけど
誰もがみんな その問いを避けているんだろ

「明日」って 一体何かだって? 馬鹿かお前ってね
でも僕はその問いから逃げられない
その力が昨日を降り返り 今日を生き抜き
明日を支えているんだってこと
それが「明日」ってやつかもしれないと思うんだ

「明日が見えないのは 未来が真っ暗な闇だからじゃなくて
 まばゆく光り輝いているからなんだよ」
誰かがそう言った
なるほどそうかとその時は思ったけれど
絶望にうちひしがれ 灯りもない部屋の中で
独りただ涙を流すとき そう言えるだろうか?

過ぎ去った恋に心をいためて
満月に願いをかけてみたりしたこともあるし
流れる雲を見て遠い夏のあの日に
想いを馳せたこともあった

美しい過去が 現在の僕たちにとって
かけがえのない一部になっているんだとしたら
明日には昨日になる今日も きっと大切な思い出に変わるのなら
今の僕はすごく輝いているにちがいない
全てが平等に同じ一日だとしたら 思い出にはなりえない
日々の違いが 日常の中の非日常が
きっと新しい何かをつくりだすんだよね

僕が風邪をひいて寝ていたとき
お見舞いに来た彼女がこう言った
「早く元気になって、明日また会おうね」
僕にとってその明日は待ち遠しく 宝石のようなものだった
彼女はもう忘れてるだろうけど
あの時僕 とても嬉しかったんだ
今は 風邪をひいていても 彼女はもうそれを知らない
そんな明日はあの時のものとは違っていて
とても不安で 迎えたくない客のようなもの

でも人によっては
明日は久しぶりのデートの日
忙しい仕事の日
資格の試験の日
子供の入学式の日
人生の新しい門出の日
楽しみなお出かけの日
そして何もない普通の日

人の数と同じだけの明日が
そう 夢のように
僕たちを待っているんだね

“Tomorrow is another day”
そういえば そんな歌詞の歌もあった
明日には今日と違う自分に出会えるのなら
僕はいつまでも明日を 追いかけ続ける
でもそれは
追いつけない鬼ごっこ
遠くに伸びた自分の影をおいかけるような日々

だってこうしてる間にも
時計の針は旅を終えて
日付も明日が今日になっている

そんなふうにして一日が
だれにでも同じように そして、少しずつ違って
昨日には今日が、今日には明日が
こんなふうにして訪れる

「明日」って 一体何なんだろうって思うんだ
僕は今でも その問いから逃がれられない

1994.11.29
2001.10.8改訂


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