時 雨


昨日から降り続いた 雨がこの街をぬらしてる
あれからもう何年かな 君のこと…忘れかけてる

あの頃のなにげのない 日常も今になれば…
夢に描いた生活(くらし)だった 君の肩 抱きしめたのも

  君にもらった写真
  なぜだか今でも 捨てられない
  君の微笑み 今は遠いから あの空の下



穏やかな風に揺れてる 君のピアスにふれてみた
二人あの頃 ただひたすら 終わりなき愛を育てた

いつからかすれ違ってた 心の影が大きくなって
いつしか二人 信じてた愛さえも 見失ってた

  君の視線が僕をもう
  探していないと気づいてたよ
  君の寂しさ 抱きしめられるのは もう僕じゃない



「いつまでもそばにいるよ」と 僕はあの夜 つぶやいた
だけど君は応えられず 曖昧にただうなずくだけ

あの日の夜も冷たい雨が 降り続いた 傘の中で
突然すぎた別れの涙が 時を止めて 雨音だけが響いてた

  君の涙が僕の目に
  浮かんで 消えては ながれてゆく
  雨に濡れてる 孤独な街路樹 それが僕らさ



  雨の中 走り去る君の背中を
  僕は追えない「もう逢えないから…」
  コンクリートをたたく雨音は
  僕の涙さえ 洗い流していく…



  君とすごしたあの日々も
  今では切ない記憶の欠片
  君は今ごろ どうしてるだろう 時雨の夜に

  君とすごしたこの街に
  今年も 桜が咲き始めた
  心の景色さえも 色あせていく この空の下

  今日も降り続く 時雨の中で
  何もあの頃と 変わりもしない この空の下で…

1997.7.4(旧題「この空の下で…」)
2001.10.8、2004.4.16改訂
2004.4.16改題


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