文藝歴譜タイトル

綿矢 りさ (1984.2.1−)
わたや・りさ、本名・山田梨沙(やまだ・りさ)。
1984年(昭和59年)2月1日生まれ。京都出身。早稲田大学教育学部卒。
2001年、処女作『インストール』により第38回、文藝賞受賞。
17歳での受賞は、堀田あけみ以来20年ぶりとなる最年少記録。
2004年、第2作となる『蹴りたい背中』では史上最年少(19歳)で第130回芥川賞受賞。
2006年春の大学卒業後は執筆活動に専念するが、なかなか筆が進まない時期を経て
2011年の『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。
2014年12月、2歳年下の国家公務員の男性と結婚、2015年1月に第一子を出産。
家族の仕事の都合で2022年12月から中国・北京市で暮らしている。

*読んだ著書*/著作リスト


インストール
(2001年刊/河出書房新社)

文藝賞を受賞した処女作。
押入の中のコンピュータを通して、二人が見た大人の世界とひと月の長い放課後を描く。
若い感性で突っ走って書いたと思われる、なんともPOPな筆致。
文章を書くことに抵抗や衒いがない世代ならではの持つ、文学の新しい可能性を感じさせる。
さらっと読めてしまう、爽快感あふれる作品。

評価/★★★☆☆


蹴りたい背中
(2003年刊/河出書房新社)

第2作。2004年の話題をさらった芥川賞受賞作。
前作『インストール』もそうだったけど、文体は「話し言葉」で、難解な表現などは
あまり見られないので、スムーズに読むことが出来ます。
文章表現を少し技巧的に意識している感じもあるけど、前作より面白かった。

評価/★★★☆☆


夢を与える
(2007年刊/河出書房新社)

〔概要〕
3歳でチャイルドモデルとしてデビューし、芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。
ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするのだが…。
成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く、待望の長篇小説。

〔感想〕
芥川賞受賞後、4年ぶりの作品(短編は1本あり)となる待望の第3作。
とても面白かった。少女の日記かエッセイのような前2作とは全く文体を変え、客観的に主人公を描くことに視点を変更。
文体の変化で表現にも幅が出て、物語の世界観も豊かになっていると思う。
「無垢な少女」から、「知りすぎる大人」へと成長していく、主人公の夕子に訪れる激動の渦には
作者の綿矢りさ自身の実体験が少なからず投影されているのかもしれない。
でも、そういう裏側を邪推しなくても、小説として充分に面白い作品だった。次回作にも期待したい。

評価/★★★★☆


勝手にふるえてろ
(2010年刊/文藝春秋)
映画化『勝手にふるえてろ』(2017年日本)

〔概要〕
賞味期限切れの片思いと、好きでもない現実の彼氏。どっちも欲しい、どっちも欲しくない。恋愛、しないとだめですか。
片思い以外経験ナシの26歳OLが、時に悩み時に暴走しつつ現実の扉を開けてゆくキュートで奇妙な恋愛小説。

〔感想〕
ネット上での評判では酷評されている方も多いみたいですが、個人的にはけっこう面白かったです。
恋愛に奥手な主人公のOLは多分に作者自身の投影とも思えるけど、もしそうだとしたら、キュートな見た目以上に
けっこう腹黒いというか、いろんなことを考えてる(当たり前だけど)んだなぁと思いました。
ジレンマや葛藤は、多かれ少なかれ、誰もが持ってる物。
その大小とか程度の差は、第三者の視点から見るととてもつまらないものに思えたりもするんだけど、
当事者の本人にしてみたらすごく大きな問題なんですよね。
なんでもない他人の視線が気になったり、一言で傷ついたり…
そういう感受性みたいなのが、ストレートにいろいろ表現できている作品だと思います。
26歳の作者自身の、今でしか書けない作品かなぁ、と思います。
アイドル作家から少しずつ脱皮しつつある、そんな過程の中のひとつの習作なのかもしれません。

評価/★★★★☆


かわいそうだね?
(2011年刊/文藝春秋)

〔概要〕
 「かわいそうだね?」
緊急事態に彼はどちらを助けるんだろう―私?それとも元彼女?
28歳の樹理恵は無口だけど頼れる彼氏・隆大との交際が順調、百貨店での仕事も順調で幸せな日々。
ところが彼が、無職で家賃が払えなくなった元彼女・アキヨを助けるため自宅に居候させると切り出したことで暗雲が…。
彼が好きなのは私だって言うけれど!?
 「亜美ちゃんは美人」
さかきちゃんは美人。でも、亜美ちゃんはもっと美人。高校時代に出会った二人。
大学、社会人、と年を経ていくなかでさかきちゃんは常に複雑な思いで「自分より美人の親友」を見つめ続ける。
そして亜美ちゃんが「初めて本気で人を好きになった」と連れてきた結婚相手は―。女性同士ならではの一筋縄ではいかない友情を描く。

私の彼は元彼女と同棲中…。週刊誌連載時から話題を呼んだ表題作と、女子同士の複雑な友情を描く「亜美ちゃんは美人」の2篇を収録。
デビューから10年、綿矢りさが繰り広げる愛しくて滑稽でブラックな“女子”の世界。

〔感想〕
短編2作が収録されていますが、どちらもなかなか面白かったです。
いつも隣にいる女の子同士が、好き合っているようでいて、実は嫌い。男から見ても、よくありそうなことに思えます。
そのあたりがとてもリアルに描けているんじゃないかな。

評価/★★★☆☆


ひらいて
(2012年刊/新潮社)

〔概要〕
同じクラスの男子生徒に恋をした愛。彼女は彼をもっと知りたい一心で、予備校の仲間たちと共に夜の学校に忍び込み
彼の机の中を漁るという大胆な行動に出るが、そこで彼に恋人がいることを知ってしまう。
やり場のない気持ちは彼ばかりでなく彼の恋人にまで向き…。

〔感想〕
おおー、綿矢りさ、ここまで行くか!と思いながら読み進めました。なかなか面白かったです。
最初の華やかなデビューから成長して、前作「かわいそうだね?」と今作で、だいぶ今の彼女自身なりの描き方ができてきてるんじゃないかな。
最後の終わり方が少し物足りなく感じました。

評価/★★★☆☆


しょうがの味は熱い
(2012年刊/文藝春秋)

〔概要〕
就職以来、いつも仕事に押しつぶされそうに疲弊している絃と、大学生として学校に通いながら家事をする奈世。
もう半年同棲している二人。夕ご飯を済ませ、電気を消した部屋でニュースを見て、布団に入る。
並んで横たわる二人の思考はいつの間にかどんどんかけ離れてゆき…。
「同棲は結婚に続いていないみたいだ」そんな“真理”にはたと気づいた奈世の選んだ道とは…。
愛し合って一緒に住んでるのに、どうしてもすれ違う二人の胸の内を、いやんなるほどリアルに描く連作2篇。

〔感想〕
新刊の発行ペースもあがってきて、より作家らしくなってきました。
今作は同棲しながらもすれ違う二人の心模様をそれぞれの視点で描いたもの。
これまでの作品に比べて、描く世界はさらにミニマムになり、私小説レベルまで降りてきていて。
それでいて、「かなり重たい女」の描かれ方がリアル。インタビューによると、作者自身にも重なる部分があるようで…。
どんなに重たくても、好きになったらその人が一番っていうのが男側からの意見ですけどね(笑)

評価/★★☆☆☆


憤死
(2013年刊/河出書房新社)

〔概要〕
「命をかけてた恋が、終わっちゃったの! 」失恋して自殺未遂したと噂される女友達。
見舞いに行った私に、彼女が語った恋の真相とは!?
綿矢りさの新たな魅力あふれる初の連作短篇集。

〔感想〕
TV番組の『世にも奇妙な物語』が好きとインタビューで語っていた作者。
本作に収められたショートミステリー4作は、まさにそういうテイストを感じさせる物語ばかりでした。
最初の短い「おとな」は実話!?と思わせる仕掛けがあるし、ホラー調の「トイレの懺悔室」と「人生ゲーム」も
時間軸をからめた物語でひとつのストーリーとしてまとまっている。
タイトル作の「憤死」は一番作者の味が出ている作品だと思いました。
どっぷり恋愛モノからこじらせ系同棲モノ、ホラーまでいろんなジャンルに挑戦中の作者。
まだまだ若いし、これからどんな作品を描いていくのか楽しみです。

評価/★★★☆☆


大地のゲーム
(2013年刊/新潮社)

〔概要〕
私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった―。大地はまた咆哮をあげるのか?
震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、巨大地震が襲う。
来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。
極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版『罪と罰』。

〔感想〕
設定は2080年ぐらいの近未来の、とある都市の首都。
そこで大地震を経験した若者たちを描く…なんだけど、なんだこりゃ。って感じでした。全然面白くなかったです。
ハリウッド映画の超大作アクションモノで、予告も派手ですごくて、だけど実際に観てみたら全然面白くない。
そんな『ウォーターワールド』みたいな感じでした。
今まで小さな世界を描いてきた作家なのに、急にこの風呂敷の広げ方はムリがありすぎる。なんだろうなぁ。
世界観もちょっと薄っぺらでシラけてるし、登場人物たちも行動心理が不可解で感情移入できないし。
うーん、こっちの方向には行くべきではないかな。

評価/★☆☆☆☆


ウォーク・イン・クローゼット
(2015年刊/講談社)

〔概要〕
「いなか、の、すとーかー」
デビューからわずか3年の若手陶芸家・石居は、テレビで特集が組まれるほどの人気の売れっ子。
東京の美大卒業後、郷里に戻り、工房をかまえ、絵になるロハスな陶芸家生活を送っている。
しかし、以前から彼を追う女ストーカー・砂原が工房に現れるようになり、事態はどんどん不穏さを増していくのだが…。

「ウォーク・イン・クローゼット」
早希は、28歳、彼氏なしのOL。幼なじみで売り出し中のタレント・だりあのマンションには、撮影で着て
買い取った服がぎっしりの、早希には夢のようなウォーク・イン・クローゼットの部屋があるのだ。
そんなふたりの友情のゆくえは…?

表題作の「ウォーク・イン・クローゼット」と「いなか、の、すとーかー」の中編2本を収録。

〔感想〕
正直、ボチボチかなぁという印象でした。
ストーカーの話は、もしかしたら筆者自身の体験談もあるのかもしれないね。
彗星のように現れた美少女作家の頃は、そういう噂もあったという話も聞くし。
でもそうだとしたら、落としどころがちょっと弱い気もするかな。
最後に関係者全員が集まって、石居が開き直るあたりは場面としては良かったけど。

洋服大好きOLのお話は、筆者と同世代の女性の視点がけっこうリアルで良かったと思います。
自分が好きな服と、似合う服、モテる服の違いとか、正直男性はそこまであまり意識してないと思う(笑)んですが
陰で健気な努力を続けている女性たちの姿勢は応援したいですね。
終盤のだりあに関する急展開は、ちょっといらないかも。
それにしても、読んでいる間中、だりあの姿が土屋アンナに思えて仕方なかったのは僕だけかな?
それにしても、綿矢りささんももう31歳なのかぁ。
最近結婚されたそうだし、これからもっと作品の世界観が広がっていってくれるといいですね。

評価/★★★☆☆


意識のリボン
(2017年刊/集英社)

〔概要〕
母親を亡くした二十代の「私」は、「絶対に長生きするからね」と父に誓ったのに、交通事故に遭ってしまう。
激痛の嵐の中、目を開けると二メートルほど下に自分の身体を見下ろしていて…。
表題作ほか、姉妹、妻、母親――様々な女たちの視線から世界を切り取り、人生を肯定するあたたかさを感じさせる。
著者新境地の全八編の短編集。

〔感想〕
ちょっと変わり種の作品で、意外な感じで面白かったです。小説ではなく、エッセイというか、随筆集という感じかな。
かと思えば、本人の体験記のような描写もあり…。
文壇のアイドルとしてデビューしながら、その狂騒的な騒がれ方と、本人のイメージのギャップはかなり大きかったんだと思う。
『ウォーク・イン・クローゼット』でもそういう雰囲気はあったけど、30歳という年齢なのか、結婚や出産という経験が転機になったのか
最近の作品はだいぶ世界観が変わってきていると思います。
個人的には、可憐なルックスの中に蠢く腹黒い怒りのようなものが、なんとも文学的に描かれていて興味深かった。
最初の2作は日常にありふれた場面を写実的にうまく切り取っていると思うし
中盤の作品の姉妹や「声の無い誰か」の、裏のある物語もミステリアスで良かった。
「怒りの漂白剤」は、自分の中にひそむ様々な感情の分析のような感じで、一番好きかも。
表題作の「意識のリボン」はちょっと別枠のファンタジー。
様々な派生が期待できそうな佳作が多く、これからの成長が楽しみです。

評価/★★★☆☆


手のひらの京
(2016年刊/新潮社)

〔概要〕
おっとりした長女・綾香は図書館で働き、気が付けば31歳。次第に結婚への焦りが募ってくる日々。
子供の頃からモテて、恋愛に生きる次女・羽依は入社早々、職場で人気の上司と恋仲に。
大学院で研究に没頭するリケジョの三女・凜は自ら人生を切り拓くべく、いずれ京都を出ようとひとり心に決めていた。
生まれ育った土地、家族への尽きせぬ思い。かけがえのない日常に宿るしあわせ。
「なんて小さな都だろう。私はここが好きだけど、いつか旅立つときが来る…」
奥沢家三姉妹の日常に彩られた、京都の春夏秋冬があざやかに息づく、綿矢りさ版『細雪』。

〔感想〕
すごく面白かったです。綿矢さんの作品で一番面白かったかも。
序盤は少し停滞気味でしたが、三姉妹のキャラが立ってきた中盤以降は一気に読み終えました。
筆者自身が京都出身なので、生まれ育った京都の街の中で、登場人物たちが勝手に動き出している筆致。
文章にはできても、発音にこめられた微妙なニュアンスを的確に再現するのが難しい京都弁が、すごくリアル。
そして、京都の人ならではの気質みたいなものが、じんわりと伝わってきます。
京都という街に囚われた人々が、甘んじてその歴史の渦の中に埋没している感じで。
あの街に住む人々も、大昔から変わらない寺社の景色も、祇園祭や五山の送り火等の年中行事も
ずっと変わらずにい続けることで、歴史を繋いでいっているという無意識の感覚があるんでしょうね。
ほんと、京都という街は特別な場所だなぁとあらためて思いました。
ロームのイルミネーションとか、懐かしい描写もあったのが嬉しかったです。
僕もそうだけど、ちょっとでも京都に住んだことがあれば、この作品は何倍も面白く感じるはず。

内容的には三姉妹のそれぞれの悩みの日常が描かれていて、それぞれに全く異なる性格なんだけど
「京都の女性」という芯の部分が共通しているので、考え方や行動がすごく興味深かったです。
本作や、瀧羽麻子さんの『左京区七夕通東入ル』なんかが懐かしくて好きになるぐらい、僕もきっと
京都という街が好きで、その魅力に囚われていたんだろうなぁ。

評価/★★★★☆


私をくいとめて
(2017年刊/朝日新聞出版)

〔概要〕
黒田みつ子、もうすぐ33歳。一人で生きていくことに、なんの抵抗もない。
だって、私の脳内には、完璧な答えを教えてくれる「A」がいるんだから。
私やっぱり、あの人のこと好きなのかな。
でも、いつもと違う行動をして、何かが決定的に変わってしまうのがこわいんだ―。

感情が揺れ動かないように、「おひとりさま」を満喫する、みつ子の圧倒的な日常に、共感必至!
同世代の気持ちを描き続けてきた、綿矢りさの真骨頂。初の新聞連載。

〔感想〕
なかなか面白かったです。『勝手にふるえてろ』と似たテイストはあるけど、7年経っている分
筆者自身も成長していたり、様々な経験をしたりということで、味付けがさらに豊かになっている感じ。
都合よく出てきてはアドバイスをくれる「脳内Siri」こと「A」。
自分自身でその存在を認識していて、二重人格というわけではないけれど、ある程度
別人格として成り立っているんだよね。慌ててて見つからない時に探し物の場所を教えてくれたりとか。
でも、考え方や、発言は自分自身の中から生まれてくる深層心理だとみつ子は理解しているから
会話劇としてちょうどいいリズム感につながっているんだろうね。
2020年冬に、みつ子=のん、多田くん=林遣都で映画化されるらしいです。
みつ子は文中では地味でゴボウっぽいという表現があるので、可愛すぎるのでは?(笑)
イキイキとした脇役のノゾミさんやカーターの配役も気になるところです。

評価/★★★☆☆


オーラの発表会
(2021年刊/集英社)

〔概要〕
「人を好きになる気持ちが分からないんです」
大学1年生の海松子(みるこ)は、他人に興味を抱いたり、気持ちを推しはかったりするのが苦手。
趣味は凧揚げ。特技はまわりの人に脳内で(ちょっと失礼な)あだ名をつけること。
友達は「まね師」の萌音、ひとりだけ。
なのに、幼馴染の同い年男子と、男前の社会人から、 気づけばアプローチを受けていて…。
他人の気持ちを読めない女子の、不器用で愛おしい恋愛未満小説。

〔感想〕
すごく面白かったです。『私をくいとめて』なんかでも描かれていたような、今風に言うと「こじらせ女子」の海松子。
周りとはちょっとズレていて、実は軽いいじめを受けていたことも「会話が少なかった記憶がある」と
受け止めていたり、独自の世界観を持っていて、ちょっとクセのある女子大生。
かと思えば、クラスメイトからの「宅飲み」に気軽に参加したり、際どい衣装のウェイトレス服も気軽に着たり。
親から命じられて突然始まった一人暮らしだけど、そこでどんどん成長していきます。
序盤はとっつきにくい感じだけど、海松子の触れる世界はすごく彩り豊かで。
細かい感情の起伏とか、情感の機微みたいなものが丁寧に描かれています。
もはや文壇のアイドルではなく、立派な作家さんになりましたね。

評価/★★★★☆


嫌いなら呼ぶなよ
(2022年刊/河出書房新社)

〔概要〕
「一応、暴力だろ。石でも言葉でも嫌悪でも」。
妻の親友の家に招かれた僕。だが突然僕の行動をめぐってミニ裁判が始まり…。
心に潜む “明るすぎる闇“に迫る短編集。

〔感想〕
承認欲求が強すぎるOLを描く「眼帯のミニーマウス 」をはじめ、SNSやコロナ禍といったテーマを織り込んでいて
しなやかな現代風刺が得意な作家さんならではのお話ばかりで心地よかった。
ストーリーが連動していない完全短編4作ですが、特に最後の「老は害で若も輩」が面白かった。
フリーライター(42歳女性)が作家(37歳女性)に取材し、編集者(26歳男性)がそれをまとめるという物語。
そこで起こったひと悶着、メールによる言葉の応酬がすさまじい。
吐かれた毒を、時にはいなし、時には投げ返す。そして最後の結末。
その後どうなったのか、解決のために焼肉を食べに行ったのかどうか(笑)
いろんなことが気になる物語でした。これだけで★4つという感じです。
登場する作家は「綿矢りさ」なんだけど、そこで描かれているのがそのまま本人かどうかはわからないけどね。
「綿矢りさってそういう人なんだ」と鵜呑みにすると確実に「実力不足」の烙印を押されそう。

評価/★★★★☆


1 インストール 2001/11 河出書房新社 ★★★☆☆
2 蹴りたい背中 2003/8 河出書房新社 ★★★☆☆
3 夢を与える 2007/2 河出書房新社 ★★★★☆
4 勝手にふるえてろ 2010/8 文藝春秋 ★★★★☆
5 かわいそうだね? 2011/10 文藝春秋 ★★★☆☆
6 ひらいて 2012/7 新潮社 ★★★☆☆
7 しょうがの味は熱い 2012/12 文藝春秋 ★★☆☆☆
8 憤死 2013/3 河出書房新社 ★★★☆☆
9 大地のゲーム 2013/7 新潮社 ★☆☆☆☆
10 ウォーク・イン・クローゼット 2015/10 講談社 ★★★☆☆
11 手のひらの京 2016/09 新潮社 ★★★★☆
12 私をくいとめて 2017/01 朝日新聞出版 ★★★☆☆
13 意識のリボン 2017/12 集英社 ★★★☆☆
14 生のみ生のままで 2019/6 集英社
15 オーラの発表会 2021/8 集英社 ★★★★☆
16 あのころなにしてた? 2021/9 新潮社
17 嫌いなら呼ぶなよ 2022/7 河出書房新社 ★★★★☆
18 パッキパキ北京 2023/12 集英社
19 激しく煌めく短い命 2025/8 文藝春秋