文藝歴譜タイトル

島本 理生 (1983.5.18−)
しまもと・りお
東京都板橋区生まれ。2003年、立教大学文学部日本文学科入学、在学中。
平成13(2001)年、『シルエット』で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。
平成15(2003)年、都立高校在学中に『リトル・バイ・リトル』が第128回芥川賞候補となり、大きな話題を呼ぶ。
同作では第25回野間文芸新人賞を最年少で受賞。
平成16(2004)年には、『生まれる森』が 第130回芥川賞候補となった。
思春期の繊細な感情や心の痛みを鮮やかに表現し、10代・20代の読者からの支持も高い。

*読んだ著書*


リトル・バイ・リトル
(2003年刊/講談社)

〔概要〕
高校を卒業してから、アルバイトをして過ごす日々の橘ふみ。家族は、母と、小学校二年生の異父妹。習字の先生の柳さん、母に紹介されたボーイフレンドの周、二番目の父―。
「家族」を軸にした人々とのふれあいのなかで、わずかずつ輪郭を帯びてゆく青春を描いた、第25回野間文芸新人賞受賞作。

〔感想〕
なんか、パッとしなかったなぁ。
細かいエピソードというより、局面がまるでハガキのように断片的につなげられてひとつのシーンを構成しているんだけど、それらの繋がりがすごく希薄な感じがしてね。この場面はこのシーンには必要ないんじゃないかとか、何の関連があるのか、そればかりが気になった。あと、細かいことなんだけど、会話の「 」の前の途切れたような文節が気になった。同じく若い作家として同時期に注目を浴びたけど、綿矢りさの方が作品もルックスも(笑)上だと思うなぁ。

評価/★★☆☆☆


ナラタージュ
(2005年刊/角川書店)
映画『ナラタージュ』(2017年日本)

〔概要〕
大学2年生の春。泉のもとに高校時代の演劇部の顧問教師・葉山から「演劇部の後輩の為に、卒業公演に参加してくれないか」という誘いの電話がかかってくる。
高校時代、学校に馴染めずにいた泉を助けてくれた葉山…。
卒業式の日の葉山との誰にも言えない思い出を胸にしまい、彼を忘れようとしていた泉だったが、一年ぶりに再会し、押さえていた気持ちが募っていく。叶わないとわかっていながらも、それでも抑えきれない葉山への恋心。
そして葉山もまた、泉への複雑な感情を抱えているのだった…。
筆者が 20歳の若さで執筆した、狂おしいほど純粋に禁断の恋に落ちる二人を描いた恋愛小説。

〔感想〕
“ナラタージュ”(映画や演劇において人物の語りや回想によって過去を再現する手法)というタイトルの意味通り、ヒロインの回想によって構築されたこの小説は、スキャンダラスな内容ながらその文芸的評価も高く、第18回山本周五郎賞候補にも選ばれ、発売当時の文学界に大きな衝撃を与えたそうです。2017年に映画化されるということで話題になっていたので、原作を読んでみたんですが、なかなか面白かったです。一言でいえば、僕はこの小説が好きです。ネットの評価を見ると、低評価の方もいるようですが、若い時代特有の瑞々しさとか、どうにもできない感情の行き違いとか、その時代特有のもどかしさとか…。様々な感情が緻密に表現できていると思います。
葉山先生と小野、泉の前に二人の男性が現れるわけですが、大人と同世代、文系と理系、着ている服のセンス、言葉の端々にあふれる想い…それぞれの対比がよく描けていると思います。葉山先生からは、大人ならではの諦観にも似た優しさを感じられるし、小野からは若さ特有の強引さとか、まっすぐな強さを感じる。僕の好きな韓国映画に『春の日は過ぎゆく』(主演:ユ・ジテ、イ・ヨンエ)があるんですが、すごく共通する切ない感じがあります。
あと、この筆者ならではの、会話の「 」の前の途切れたような文節。今回もだけど、やっぱり以前にも気になってたんですね(笑)

評価/★★★★☆