文藝歴譜タイトル

佐藤 多佳子 (1962.11.16−)
さとう・たかこ
東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。
1989年の『サマータイム』で第10回月刊MOE童話大賞を受賞し小説家デビュー。
1998年の『イグアナくんのおじゃまな毎日』で第38回日本児童文学者協会賞、第45回産経児童出版文化賞受賞。
2007年の『一瞬の風になれ』で第136回直木三十五賞候補、第28回吉川英治文学新人賞受賞、第4回本屋大賞受賞。
2011年の『聖夜』で第60回小学館児童出版文化賞受賞。

*読んだ著書*


一瞬の風になれ/第一部 −イチニツイテ−
(2006年刊/講談社)

〔概要〕
幼い頃から、天才サッカー選手である兄の健一に憧れていた神谷新二。サッカー選手としての自分自身の限界を悟った新二は、高校生になってから陸上に入部した。短距離走者の親友・一ノ瀬連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった―。
3部作の第1作に当たる本書では、新二がシーズン(春から秋)の1年目を終えるまでが描かれる。競技の初心者である新二の目を通じて、読み手も陸上のいろはが自然と身につく構成だ。見事なのは、競技中の描写。新二が走る100m、200m、400mなどを中心に、各競技のスピード感や躍動感が迫力を持って伝わってくる。特に、本書の山場とも言える4継(4人がバトンをつないで合計400mを走るリレー)では、手に汗握る大熱戦が展開される。

〔感想〕
なかなか面白かったです。誉田哲也の『武士道シックスティーン』みたいな青春物語。
だけど、この作品の特徴は、主人公の新二が一人称で語っていることかな。小説というより、レポートみたいな感じです。他のキャラクターは、あくまでも新二の日常生活や、部活の中で出てくるだけだしね。連や、根岸や、三輪先生なんかもそう。そういう意味で、かなり容易に人物に傾倒できるんじゃないかと思う。中学生ぐらいの頃に読めば、「何かスポーツの部活をやりたい!」と熱く思ったんじゃないかな(笑)こういう本は、学校の図書館に常備しておいて、いつでも誰でも読めるようになっているのが望ましいね。
大人になって、「もし昔に戻れるのなら、学生の頃の熱い青春時代をやり直したい」と思っている人は多いと思うけど、そういう願いをちょっとだけ後押ししてくれるような、そういう追体験をさせてくれる物語かなと思います。
3部作ということでわりとアッサリ終わっちゃうんだけど、続きが楽しみです。

評価/★★★☆☆


一瞬の風になれ/第二部 −ヨウイ−
(2006年刊/講談社)

〔概要〕
オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、2年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは関東へ―。
新二と連の第2シーズンが始まる。

〔感想〕
すごく面白かったです。一気に読んでしまいました。第1部はやっぱりどうしても導入の感が強かったけど、陸上に出会い、先輩に鍛えられた新二が、やがて後輩を育てていく。その努力の過程に、グッときました。最後に大きな事件が起きるんだけど、そのことが新二をまた強くしてくれるんだろうね。最終第3部への期待を持たせて、幕は静かに、爽やかに閉じていきます。

評価/★★★★☆


一瞬の風になれ/第三部 −ドン−
(2006年刊/講談社)

〔概要〕
いよいよ始まる。最後の学年、最後の戦いが。100m、県2位の連と4位の新二。「問題児」でもある新入生も加わった。部長として、短距離走者として、春高初の400mリレーでのインターハイ出場を目指す。「1本、1本、走るだけだ。全力で」。最高の走りで、最高のバトンをしよう―。白熱の完結編。

〔感想〕
一気に読んでしまいました。最後も面白かったです。最終学年を迎えて、それぞれの登場人物が向き合う競技の集大成。結果が出た人、出なかった人。それぞれの頑張りに、グッと胸が熱くなりました。泣きそうになっちゃったシーンもあったし。学生時代の部活の様子を描いた小説としては、素晴らしい作品だと思います。高校生の頃に読みたかったなぁ(笑)
ただ、ラストシーンは少しアッサリしてるかも。あのレースが確かに決着の舞台ではあるけど、その先もどうしても気になるじゃないか(笑)新二と若菜の恋の行方も気になるし…。大学生になった彼らを描く続編が出てくれないかな。

評価/★★★★☆