
| 荻原 浩 | (1956.6.30−) |
| おぎわら・ひろし 1956(昭和31)年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒。 広告製作会社を経て、1997年の『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。 その後はなかなかヒット作に恵まれない時期が続くが、若年性アルツハイマーをテーマにした 2004年の『明日の記憶』が、第18回山本周五郎賞に輝く。 同作品は、俳優渡辺謙のセルフプロデュースにより2006年5月に映画化。 2016年の『海の見える理髪店』で第155回直木三十五賞受賞。 軽妙洒脱、上質なユーモアに富んだ文章には定評があり、行間に人生の哀歓が漂う。 代表作に、『コールドゲーム』、『メリーゴーランド』、『僕たちの戦争』など。 |
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*読んだ著書*/著作リスト
あの日にドライブ
(2005年刊/光文社)
〔概要〕
元エリート銀行員だった牧村伸郎は、上司へのたった一言でキャリアを閉ざされ、自ら退社した。
とりあえず当座の生活費稼ぎにとタクシーの運転手を始めた伸郎だったが、乗車業務に疲れて帰ってくる毎日。
営業ノルマに追いかけられ、気づけば娘や息子と会話が成立しなくなっている。
そんなある日、たまたま客を降ろしたのが学生時代に住んでいたアパートの近くだった。
もしあの時違う選択をしていたら…。
人生、今からでも車線変更は可能なのだろうか?過去を辿りなおした伸郎が見たものとは?
〔感想〕
予想以上に、なかなか面白かったです。
文章も軽妙で読みやすいし、主人公の持つエリート意識、プライドゆえに起こる騒動が、物語のちょうどいいアクセントになっている。
中盤からはちょっとストーカー物語っぽくなってくるけど、人生の岐路を振り返り、後悔に苛まれたり、別の人生を夢想する様子はわからなくもない。
筆致のテイストが好みなので、ぜひ他の作品も読んでみたい。
評価/★★★★☆
ハードボイルド・エッグ
(1999年刊/双葉社)
〔概要〕
33歳の最上俊平は、レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルド小説の主人公、私立探偵フィリップ・マーロウに憧れ、
彼のごとく渋く振る舞い、生きることを心情として探偵稼業を始めるが、依頼は飼い主から逃げたペット探しばかり。
そんな彼のもとに、秘書募集の貼り紙を見てやって来たのは、彼が夢想するようなダイナマイトボディの美女ではなく、
80歳過ぎのお婆さん。二人は逃げたペットの犬を探している最中、本当の殺人事件に出くわしてしまうのだった…。
〔感想〕
とても面白かったです。
主役の二人をはじめ、ホームレスのゲンさんや、Jのマスターなどキャラも活きているし、ストーリーもとても軽妙で読みやすい。
ところどころ渋いセリフを匂わせる主人公だが、婆さんのトボけたツッコミにガックリさせられるのも面白い。
最後はちょっと反則な気もするけど、これはこれでシックリ来るエンディングだったかな。
前後の扉絵のイラストも面白い。
荻原浩、やっぱりなかなかいいぞ。
評価/★★★☆☆
メリーゴーランド
(2004年刊/新潮社)
〔概要〕
民間企業を辞めて故郷にUターンし、市役所公務員になった遠野啓一。
彼は、市が出資している第3セクターに出向を命じられた。
そこは開園以来、閑古鳥が鳴く超赤字のテーマパーク「アテネ村」を運営する会社だった。
そこで彼は、そのリニューアルを一任されてしまう。過去の人脈や民間企業時代のノウハウを駆使する啓一だが、
彼の前には旧態依然とした役所システムが立ちはだかるのだった…。
地方都市の村興しと権力闘争に翻弄される公務員の、可笑しくてやがて哀しき奮闘を描く“宮仕え小説”。
〔感想〕
とても面白かったです。
仕事での躓きや、自分の能力の計り知れぬところでの圧力など、誰もが感じたことのあるであろう鬱屈とした気持ちに
ささやいてくるあたりは、なかなかいいところをついてるなって感じです。
ゴールデンウィークイベント後は、エピローグみたいな感じ。あの部分があるとないとで、だいぶ作品の質が変わってくるだろうね。
あのちょっと切ないエンディングが、僕は嫌いではない。
評価/★★★☆☆
噂
(2001年刊/講談社)
〔概要〕
まったく無名のブランドから発売される香水「ミリエル」。
キャンペーンの手法として、やり手の女社長が提案したのは口コミだった。
渋谷のファッション・リーダー的な少女を集め、広告代理店が創作したストーリーを流す。
「女の子をさらって足首を切り落とす、ニューヨークのレイプ魔が渋谷に出没。でも、ミリエルをつけている子は狙われない」。
宣伝のために流したこの「噂」が、やがて現実となり、足首のない少女の遺体が発見されてしまう…。
衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
〔感想〕
すごく面白かったです。
事件の謎に挑むのは、決して大物ではない巡査部長の小暮。年下だが上司の女性警部補・名島と組んだ
チームの地道な努力で、やがて事件は解決に向かうのだが…。
ほんと最後は、衝撃の結末でした。最終章だけ読み返しちゃったもんなぁ(笑)
評価/★★★★☆
明日の記憶
(2004年刊/光文社)
〔概要〕
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩…。
そして、告げられた病名は若年性アルツハイマー。
どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。
そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。
〔感想〕
すごく興味深かった。そして、とても哀しい物語だった。
記憶が失われていく様子がとてもリアルで、備忘録の記事での意図的な誤字や、
同じ文章の繰り返しなどはいかにもという感じ。アルツハイマーが死に至る難病だということを僕は知らなかったんだけど、
この病気のことを知るためにも意味深い作品だと思います。肉体の死よりも、精神の死って、身内には堪えるかもしれないね。
評価/★★★★★
さよなら、そしてこんにちは
(2007年刊/光文社)
〔概要〕
世のため、人のため、そして家族のため−。働き者の悲哀を描く、7篇の短篇集。
〔感想〕
どれも短いお話なので、一気に読めます。
テンポもいいし、どの作品も主人公は普通の人たちで、日常の生活の中でみせるちょっとした悲哀がテーマになっています。
オチが読めてしまう作品もあるけど、特に面白かったのが、映画『おくりびと』にも通ずる「さよなら、そしてこんにちは」と、
お坊さんのコミカルなクリスマスを描いた「長福寺のメリークリスマス」。
特に、最後を飾る作品では、主人公の僧侶・覚念のすごく人間くさいところが面白かったです。
評価/★★★☆☆
サニーサイドエッグ
(2007年刊/光文社)
〔概要〕
フィリップ・マーロウに憧れる私は最上俊平、私立探偵である。だが、やむなく、失踪したペットの捜索を請け負うこともある。
ある日、和服を着た若く美しい女性が事務所を訪れてきた。
ペット捜しなら、もう――「うちの猫を捜してほしいんです」はい喜んで。1カ月ぶりの仕事ではないか。
しかもそうこうするうち、なんと「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。
え、な、なんだこいつは!?おまけに猫捜しも、ただの猫捜しではなくなっていくのだった…。
『ハードボイルド・エッグ』続編。
〔感想〕
なかなか面白かったです。
前作を読んでだいぶ間が空いてるので、詳しい内容は忘れてしまったこともあるけど、あまり影響はないかな。
語る言葉がどれもシニカルなセリフっぽくて、次々と敵を作ってしまう主人公が、ドタバタに巻き込まれていく様子が楽しい。
ライトな感じで進んでいったのに、終盤急に重いテイストになってしまったのは残念だけど、最後まで飽きずに読むことができました。
次なる続編も期待したいです。
評価/★★★☆☆
月の上の観覧車
(2011年刊/新潮社)
〔概要〕
閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。
いったい何のために?去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記憶、見据えるべき未来──
そして、仄かな、希望。ゴンドラが頂に到った時、男が目にしたものとは。
長い道程の果てに訪れた「一瞬の奇跡」を描く表題作のほか、過去/現在の時間を
魔術師のように操る作家が贈る、極上の八篇。
〔感想〕
ボチボチだったかな。すべて「喪失」に浸る人々の物語です。
もう二度と会えない人、かつて愛していた人、分かれた妻、娘。
もう一度会いたい。そう願うとき、ささやかな魔法が懐かしい景色を垣間見せてくれる。
そんな短編たちでした。個人的には「レシピ」が好きかな。
ちょっとノスタルジックすぎるきらいもあるかも。
評価/★★★☆☆
| 1 | オロロ畑でつかまえて ユニバーサル広告社シリーズ |
1998/01 | 集英社 | − |
| 2 | なかよし小鳩組 ユニバーサル広告社シリーズ |
1998/10 | 集英社 | − |
| 3 | ハードボイルド・エッグ 最上俊平シリーズ |
1999/10 | 双葉社 | ★★★☆☆ |
| 4 | 噂 | 2001/02 | 講談社 | ★★★★☆ |
| 5 | 誘拐ラプソディー | 2001/10 | 双葉社 | − |
| 6 | 母恋旅烏 | 2002/04 | 小学館 | − |
| 7 | コールドゲーム | 2002/09 | 講談社 | − |
| 8 | 神様からひと言 | 2002/10 | 光文社 | − |
| 9 | メリーゴーランド | 2004/06 | 新潮社 | ★★★☆☆ |
| 10 | 僕たちの戦争 | 2004/08 | 双葉社 | − |
| 11 | 明日の記憶 | 2004/10 | 光文社 | ★★★★★ |
| 12 | さよならバースディ | 2005/07 | 集英社 | − |
| 13 | あの日にドライブ | 2005/10 | 光文社 | ★★★★☆ |
| 14 | ママの狙撃銃 | 2006/03 | 双葉社 | − |
| 15 | 押入れのちよ(短編集) | 2006/05 | 新潮社 | − |
| 16 | 四度目の氷河期 | 2006/09 | 新潮社 | − |
| 17 | 千年樹(連作短編集) | 2007/03 | 集英社 | − |
| 18 | サニーサイドエッグ 最上俊平シリーズ |
2007/07 | 東京創元社 | ★★★☆☆ |
| 19 | さよなら、そしてこんにちは(短編集) | 2007/10 | 光文社 | ★★★☆☆ |
| 20 | 愛しの座敷わらし | 2008/04 | 朝日新聞出版 | − |
| 21 | ちょいな人々(短編集) | 2008/10 | 文藝春秋 | − |
| 22 | オイアウエ漂流記 | 2009/08 | 新潮社 | − |
| 23 | ひまわり事件 | 2009/11 | 文藝春秋 | − |
| 24 | 砂の王国 | 2010/11 | 講談社 | − |
| 25 | 月の上の観覧車 | 2011/05 | 新潮社 | ★★★☆☆ |
| 26 | 誰にも書ける一冊の本 | 2011/06 | 光文社 | − |
| 27 | 幸せになる百通りの方法 | 2012/02 | 文藝春秋 | − |
| 28 | 花のさくら通り ユニバーサル広告社シリーズ |
2012/6 | 集英社 | − |
| 29 | 二千七百の夏と冬 | 2014/6 | 双葉社 | − |
| 30 | 金魚姫 | 2015/7 | KADOKAWA | − |
| 31 | ストロベリーライフ | 2016/9 | 毎日新聞出版 | − |
| 32 | 海馬の尻尾 | 2018/1 | 光文社 | − |
| 33 | 極小農園日記(エッセイ) | 2018/3 | 毎日新聞出版 | − |
| 34 | それでも空は青い | 2018/11 | KADOKAWA | − |
| 35 | 楽園の真下 | 2019/9 | 文藝春秋 | − |
| 36 | 人生がそんなにも美しいのなら 荻原浩漫画作品集 |
2020/4 | 集英社 | − |
| 37 | ワンダーランド急行 | 2022/12 | 日本経済新聞出版 | − |
| 38 | 笑う森 | 2024/5 | 新潮社 | − |
| 39 | 我らが緑の大地 | 2025/2 | KADOKAWA | − |