文藝歴譜タイトル

川口 俊和 (1971.4.3−)
かわぐち・としかず
大阪府茨木市出身。
元・劇団音速かたつむり脚本家兼演出家。
1110プロデュース公演『コーヒーが冷めないうちに』で、第10回杉並演劇祭大賞を受賞。
2015年に同作の小説化でデビュー。

*読んだ著書*


コーヒーが冷めないうちに
(2015年刊/サンマーク出版)
映画『コーヒーが冷めないうちに』(2018年日本)

〔あらすじ〕
とある街の、とある喫茶店の、とある座席には不思議な都市伝説があった。
その席に座ると、望んだとおりの過去に戻れるという。ただしそこには、めんどくさい数々のルールがあった。
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる。
この物語は、そんな不思議な喫茶店で起こった、心温まる四つの奇跡…。
 第1話「恋人」…結婚を考えていた彼氏と別れた女の話
 第2話「夫婦」…記憶が消えていく男と看護師の話
 第3話「姉妹」…家出した姉とよく食べる妹の話
 第4話「親子」…この喫茶店で働く妊婦の話
あの日に戻れたら、あなたは誰に会いに行きますか?

〔感想〕
すごく評判が良さそうなので期待して読んだんですが、正直ボチボチだったかな。
読み終わって評価をいろいろ見てみると、すごく酷評が多いので逆にびっくりしました。
たしかに気になるところも多いけど、そこまでひどくはないかな、と思うけど。
まず気になったのが、小説らしくない、まるで脚本のような情景描写。
登場人物たちやその行動を写実的に表現するのではなくて、「○○は●●をしている。△△はそれを見ている」の様な
お芝居の台本か脚本のような文章だなぁ…と思っていたら、それもそのはず、筆者の本業は脚本家の方なんですね。
しかも、舞台で当たった作品をそのまま小説にしたという…って、そのまんまですね。
もう少し小説っぽく文章の表現を変えた方がいいのでは、と思いました。最後の方にはあまり気にならなくなっていたけど。
「めんどくさいルール」も、なんだか現実的すぎるというか、物語を定めた結果に導いていきたいがための数式のようにも感じました。
登場人物たちの行動が最初から「ルール」でがんじがらめになっているので、あまり広がりがないんですよね。
それでも、「姉妹」と「親子」は良かった。続編もあるみたいなので、ちょっと読んでみたいかも。

評価/★★★☆☆


この嘘がばれないうちに
(2017年刊/サンマーク出版)

〔あらすじ〕
不思議な喫茶店フニクリフニクラにやってきた、4人の男たち。
胸に大きな痛みを抱えた彼らの、心からの願いとは…。
 第1話「親友」…22年前に亡くなった親友に会いに行く男の話
 第2話「親子」…母親の葬儀に出られなかった息子の話
 第3話「恋人」…結婚できなかった恋人に会いに行く男の話
 第4話「夫婦」…妻にプレゼントを渡しに行く老刑事の話
あの日に戻れたら、あなたは誰に会いに行きますか?
ベストセラー『コーヒーが冷めないうちに』の7年後を描く続編。

〔感想〕
前作よりイマイチだったかな。僕にはこの作家の書く文章が合ってないのかも。
舞台は今回も喫茶店の中だけなんだけど、相変わらず脚本っぽい情景描写がイマイチ。
物語的には、「ルール」の説明がくどすぎるかな。「時を超える」というきわめて不自然な現象に対して
店の人たちは平然としすぎてるし、なんでそんなルールがあるのかをなぜ知っているのかも不明。
それを知りながらやってくる客が、ルールの裏を考えてきたり、そこがまず受け入れられない(苦笑)
今回は、グッと共感できる話はなかったなぁ…。
以下、ネタバレです。マウスでなぞってお読みください。
登場人物しては、 前作には出てきた計が亡くなり、娘のミキが加わったけど、奔放な彼女が一服の清涼剤。
コーヒー担当の数は(前作には恋人がいるという描写はあったものの)唐突に妊娠していて、なんか不自然。
「幸せになるのが申し訳ない」という心境なら、恋人すら作らないような気が…。
最後の、要(数の母)が成仏したという描写だけはよかったけど。


評価/★★☆☆☆


思い出が消えないうちに
(2018年刊/サンマーク出版)

〔あらすじ〕
北海道・函館にある喫茶店ドナドナには、とてもめんどくさいルールがあるものの、過去に戻れるという噂がある。
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる。
 第1話…「ばかやろう」が言えなかった娘の話
 第2話…「幸せか?」と聞けなかった芸人の話
 第3話…「ごめん」が言えなかった妹の話
 第4話…「好きだ」と言えなかった青年の話
あの日に戻れたら、あなたは誰に会いに行きますか?
大ヒットシリーズ第三作。

〔感想〕
「ちょっと思ってたのと違うなぁ」という実写版映画を観た後、更なる続編があることを知り、読んでみました。
「ああ、そうそう、こんな感じ」という懐かしさがあるのは、このシリーズがけっこう好きだからかな。
ルールのこととか、名前や関係性を覚えにくい人物相関図とか、つっこみどころは多いけど、テイスト自体は好き。
今回は前二作の続編ではあるけど、場所は函館になっていて、そこにも同じようなお店がある不思議。
前二作と同じような話もあるけど、第4話が一番良かったかな。
今作の中で大きなキーとなっているのは『もし明日、世界が終わるとしたら?100の質問』という本。
ありふれた題材かと思いきや、それが大きな伏線となっていて、ちゃんと回収されるあたりは、シリーズで一番構成が
しっかりしていた物語かもしれないですね。

評価/★★★☆☆


さよならも言えないうちに
(2021年刊/サンマーク出版)

〔あらすじ〕
とある街の、とある喫茶店の、とある座席には不思議な都市伝説があった。
その席に座ると、望んだとおりの過去に戻れるという。ただしそこには、めんどくさい数々のルールがあった。
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる。
この物語は、そんな不思議な喫茶店で起こった、心温まる四つの奇跡…。
 第1話…大事なことを伝えていなかった夫の話
 第2話…愛犬にさよならが言えなかった女の話
 第3話…プロポーズの返事ができなかった女の話
 第4話…父を追い返してしまった娘の話
あの日に戻れたら、あなたは誰に会いに行きますか?

〔感想〕
シリーズ3年ぶりの新作ですが、毎回同じようなテイストなので、ボチボチというところでした。
ハッキリ言って、「泣ける感動作!」というところからどんどん離れている気がします。
最初に「ルールありき」なので、そのルールの合間をつこうとする人物が出てくるんですが
あくまでも「自分で作った箱庭の中で抜け道を探している」感があり、あまり深く感情移入できませんでした。
「そういうルールになっていますので」みたいな会話で、冷めちゃうんですよね…。
毎作読んでいるので、正直惰性で読んでいる感じです。
読むたびに毎回、登場人物の相関図がわからなくなるのも恒例(苦笑)

評価/★★★☆☆