文藝歴譜タイトル

福井 晴敏 (1968.11.15−)
ふくい・はるとし
1968(昭和43)年、東京都墨田区生まれ。千葉商科大学商経学部経済学科中退。
警備会社に勤務するかたわら、暇つぶしのために小説の執筆を始める。
1997年に投稿した『川の深さは』が、第43回江戸川乱歩賞選考会で大きな話題となる。
1998年の『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。専業作家に。
1999年の『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞、翌2000年に第53回日本推理作家協会賞長篇を受賞。
2003年の『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞を受賞。
2005年3月に『ローレライ』、6月に『戦国自衛隊1549』、7月には『亡国のイージス』が映画化され、1年の間に3作が映画化され話題になる。
大のガンダムファンにして、富野由悠季の信奉者。

*読んだ著書*


機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)
(2007年〜2009年、2016年刊/講談社)

〔あらすじ〕
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって一世紀。
工業用コロニーに住む平凡な少年、バナージ・リンクスは、謎の少女オードリー・バーンとの出会いから『ラプラスの箱』を巡る事件に巻き込まれてゆく。
宇宙世紀(UC)の開闢とともに生まれ、開放されれば連邦政府が終焉すると言われる『箱』の正体とは。
新たなるガンダムの鼓動が、世界に革新の予感を告げる――。
文壇の気鋭・福井晴敏が放つ、21世紀宇宙世紀神話、堂々開幕!

〔各巻タイトル・感想〕
各巻感想には、段階的なネタバレを含む場合があります。未読の方はご注意ください。

  1. ユニコーンの日(上) 評価/★★★★☆
    なかなか面白かった。物語はまだ始まったばかりだけど、これからの展開に期待させてくれます。1巻が終わってもまだ、主人公がガンダムに乗っていないところが「ガンダム小説」っぽい(笑)
  2. ユニコーンの日(下) 評価/★★★★☆
    いよいよガンダムが登場。けっこうゆったりした展開だけど、物語は始まってからまだ1日しか経過していない(笑)
    バナージとガンダムとの出会いは偶然すぎる遭遇だけど、そうできてしまったのも可能性のもたらす産物なのか…と思ったり。「可能性」という単語がやたら大きく使われているのが気になるけど、これから先どのように展開していくのか楽しみ。
  3. 赤い彗星 評価/★★★★★
    今更ながら、興国の姫君と工学部の学生という図式は、『F91』と同じだね。赤いモビルスーツが出てきたり、素人パイロットがモビルスーツの性能だけで善戦できてしまうのはガンダムならではの切り口。鹵獲という、けっこう意外な終わり方で次巻への期待はさらに高まる。面白いぞ、コレ。
  4. パラオ攻略戦 評価/★★★★☆
    軍隊的に素人なバナージが、重要機密な機体を駆って行ったり来たり…というのは、ユニコーンの超絶的な性能が為せる業、という説明が成り立つように作られてはいるけど…ちょっと強すぎる気がするかな(笑)なんでもオートで動いちゃうんなら、モビルドールと一緒だしねぇ。
    マリーダの秘密は…なるほど、そういうのもアリか、と頷かせてくれるもの。こういう他の作品とのリンクがあると、ファンとしてはちょっと嬉しいよね。
    シャアの異名のひとつ「クワトロ・バジーナ」。並び替えると「バナージ」だけど…なんか関係あるのかな?
  5. ラプラスの亡霊 評価/★★★★☆
    次なる封印が解かれたユニコーンのラプラスプログラム。次なる舞台は地上か。シナンジュとの激闘は、早くアニメーションで見てみたい。
  6. 重力の井戸の底で 評価/★★★★★
    地上編になって、舞台は大きく動き出す。「箱」に関する謎は一向に明かされないんだけど、それを取り巻く状況が大きくかわってくるのね。なんといっても、ブライト・ノアの登場!古いファンにはプレゼント的な趣向とも感じられます。他にも、シャア専用ズゴックとジムの名シーンを再現したものや、「黒い三連星」ならぬ「トライスター」(しかも、「踏み台」のセリフまで!)とか、砂漠でのバナージの成長とか…今巻は、ファーストガンダムをなぞったシーンが多いような気がしました。
    作家の筆致も、かなりガンダムっぽい。「…などという冗談はない」とか「…そうできてしまうのも道理だった」みたいな、「ガンダム的語法」ね。普通の日本語としてはかなりおかしい言い回しなんだけど、「それこそがガンダム」と思える書き方でね。元々こういう書き方だったのか、このシリーズだけ特別な語法で書いているのか。福井さんの他の作品を読んだことがないのでわからないけど。こういう書き方で「書けてしまう」のか、それとも「こう書かされてしまう魔力」が「ガンダム」という作品シリーズの持つ重みなのか。それこそが「ガンダムという名の重力の井戸」に作者自身が絡めとられているものなのか…。
    個人的には、マリーダのその後が気になるところ…「バンシィ」も出てきたし、物語の本筋もこれから大きく動いていくんだろうね。
  7. 黒いユニコーン 評価/★★★★★
    物語は着実に終盤へさしかかっているね。ブライトに続いてベルトーチカまで出てくるとは…!旧世代MSの登場は、映像的にはとてもにぎやかなものになりそうな予感。
  8. 宇宙と惑星と 評価/★★★★☆
    敵と味方がひとつの艦艇に集合してしまうというのはいくらなんでも無理な気がするけど、捕虜云々のあたりは面白かった。映像化したときに、だいぶ動きのあるシーンの連続になりそうなファクターだね。フル・フロンタルの掲げる「サイド共栄圏」の発想は、今までになかった斬新なものだね。でも、その裏にはまだ何か別の思惟がありそうな気が…。
  9. 虹の彼方に(上) 評価/★★★★★
    キタコレ。何もかもが、超ガンダムな第9巻。ものすごく面白かったです。これはある意味、『逆襲のシャア』を越えたのでは…?チェーンが散らしたサイコフレームの光が再現するんだけど、思わずそのシーンでは泣いてしまいそうになりました。過去のガンダムシリーズの名場面や名セリフをオマージュしすぎてるところが少し鼻についたりもするけど、それも愛嬌かな。過去のシリーズを見ていれば見ているほど、ニヤリとできるシーンが含まれているのも、ある種の『ラプラスの箱』だったりしてね。封印がひとつ解けるたび、少しずつ物語は真相に近づいていく…。終わってしまうのがもったいないシリーズです。あと、この巻で圧倒的なのが宇宙での戦闘シーン。ユニコーンやバンシィはもちろん、クシャトリヤ、シナンジュ、ローゼン・ズール、ジェスタまで見せ場がいっぱいです。映像化が楽しみ。
  10. 虹の彼方に(下) 評価/★★★★★
    ついに終わってしまった…。読みすすめる楽しさと、終わってしまう寂しさ。両方が味わえた、とても素晴らしいシリーズでした。作者である福井氏の、ガンダムに対するただならぬ愛を感じました。最終巻ではついに「ラプラスの箱」の秘密が明かされるんですが、なんとなくイメージしていた内容のものでした。形としては違うものだったけど。終盤の展開は、なんとなく「ア・バオア・クー」とか「アクシズ・ショック」に似てる感じがしたけど、ご愛嬌かな。鉄骨のフェンシングとか、ラスト・シューティングはやりすぎだと思うけど(笑)最後は…光ですね。人の心の温かさを見せなくちゃならないだろ、ってことですね。最後は戦闘シーンの描写がだいぶ細かくなった気がします。作者が慣れてきたのか、アニメ化を見越してだいぶ細かく設定を指定するようになったのかはわからないけど。『逆襲のシャア』と、その後の世代の「ミッシング・リンク」を埋めるのに充分な価値を持った秀作だと思います。ただ、ガンダムを知らない人にはオススメできませんが(笑)
  11. 不死鳥狩り 評価/★★★★★
    シリーズとしては全10巻で完結しているんですが、外伝という形でリリースされた第11巻です。世界観とか登場人物がリンクしているところもありますが、基本的には別のお話。「シナンジュ強奪事件」を描いたシリーズの前日談の「戦後の戦争」と、3号機フェネクスの登場する外伝「不死鳥狩り」の短編2作が収録されています。どちらもぜひOVAとして追加リリースしてほしいです。フェネクスの話はガンダムフロントから出てきたものなので、機体ありきで物語としては無理が多いんですが、黄金の3号機はぜひアニメで観てみたい。

総合評価/★★★★★